奈良県下の優秀な生徒を育てようと1986年男女共学の進学校として開校した西大和学園。2024年の東大合格者は71人と全国5位を誇る。基本の教科学習に力を入れると同時にさまざまな形で探究的な学びを取り入れている同校の「探究」授業に密着した。「偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2025」(朝日新聞出版)から紹介する。
【写真】授業の様子、工夫が凝らされたプリントなどはこちら(全3枚)通常の授業や学校行事にも探究的な場面をつくる
2022年度から高等学校に導入された「総合的な探究の時間」。社会のさまざまな課題を生徒自らが発見・解決するマインドセットと、そのための情報収集や分析スキルを生徒主体で身につけてもらうのが目的だ。
「けれども、そうした力は『探究の時間』を行うだけでは身につきません。通常の授業や学校行事などでも、積極的に探究的な場面をつくることが大切です」
こう語るのは、23年から同校に赴任してきた梨子田喬(なしだ・たかし)先生。岩手県の公立高校で長年探究授業を行い、高い成果をあげてきた人物だ。
実社会との関わり 考える姿勢を強くする
梨子田先生が探究的な学びを仕掛けたのが、年度頭に行われる遠足だ。
「クラス替えしたばかりで親睦を深めるための遠足を、探究に使わないのはもったいない。遠足先の『アドベンチャーワールド』と、和歌山県の熊野に開校予定の『うつほの杜学園』と連携しながら、未来の子どもたちが学ぶ学校の教育活動を構想してもらいました」
まずは遠足の事前学習で、未来の社会像とその社会で求められる力について考えた。6人のグループでアイデアを出し合う。
「しょーもないアイデアこそ大切だよ」と、せっかくの発想に自分でブレーキをかけないようアドバイスをする梨子田先生。
探究授業ではまず思考を広げていく「拡散」が大切。クリエーティブに物事を生み出すために必要な力だ。
ふせんに各自がアイデアをどんどん書き、話し合いながらまとめていく。
事前学習をやることによって、当日、テーマパークを漫然と回るのではなく、目的をもって観察するようになり、それが思考のスイッチをオンにし、探究的な姿勢を育むという。
「探究学習というと、とかく社会と関わることが強調されますが、社会との関わりはあくまで仕掛け。本質は考える姿勢を育むことです」と梨子田先生は言う。
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