ここでも、最初はグループに分かれて自由な発言の時間を持つ。生徒たちは教科書や資料集、先生のプリントなどを材料に、古代オリエントの世界を手探りで進む。先生も、折にふれて、考え方のヒントになるような声がけをしていた。

「資料や私の言葉から発想を飛ばして、古代の学校に必要だった能力は何か、それは現代にも必要なものか? そもそも学校の役割が古代と現代では違うのではないか? では未来の学校ではどうだろう……そんなふうに疑問や問いが次々と湧いてくればしめたものです」と梨子田先生。

「古代オリエントに学校をつくるプロジェクト」について考えられるよう梨子田先生が作成したプリントを配布。当時の言語、神話宗教、秩序、生産、技術、商業の様子がわかるようなヒントも書かれている(写真/福西敏之)

 遠足と世界史という、一見接点のなさそうな活動に、「学校」という共通ワードを投げ入れることで、横断的な思考が可能になる。

「1回の投げかけでは打ち上げ花火で終わってしまいます。でもこんなふうにシチュエーションを変えながらスイッチをちりばめることで、生徒たちは試行錯誤しながら拡散と収束、具体と抽象といった思考を繰り返し、非認知能力が鍛えられていくのです。高校時代という長いプロセスのあらゆる場面で、生徒が本気で考える力を育てるのが探究授業です。プロセスを積み重ねることで、最初はできなかったことができるようになる、自分の意見をはっきりと言えるようになる、思考の幅が広がっていき、自問自答の質も上がっていくでしょう」(梨子田先生)

(文/篠原麻子)

奈良県下の優秀な生徒を育てようと1986年男女共学の進学校として開校した西大和学園。現在は大阪から通う生徒も多い。2024年の東大合格者は71人と全国5位(写真/福西敏之)
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