ここでも、最初はグループに分かれて自由な発言の時間を持つ。生徒たちは教科書や資料集、先生のプリントなどを材料に、古代オリエントの世界を手探りで進む。先生も、折にふれて、考え方のヒントになるような声がけをしていた。
「資料や私の言葉から発想を飛ばして、古代の学校に必要だった能力は何か、それは現代にも必要なものか? そもそも学校の役割が古代と現代では違うのではないか? では未来の学校ではどうだろう……そんなふうに疑問や問いが次々と湧いてくればしめたものです」と梨子田先生。
遠足と世界史という、一見接点のなさそうな活動に、「学校」という共通ワードを投げ入れることで、横断的な思考が可能になる。
「1回の投げかけでは打ち上げ花火で終わってしまいます。でもこんなふうにシチュエーションを変えながらスイッチをちりばめることで、生徒たちは試行錯誤しながら拡散と収束、具体と抽象といった思考を繰り返し、非認知能力が鍛えられていくのです。高校時代という長いプロセスのあらゆる場面で、生徒が本気で考える力を育てるのが探究授業です。プロセスを積み重ねることで、最初はできなかったことができるようになる、自分の意見をはっきりと言えるようになる、思考の幅が広がっていき、自問自答の質も上がっていくでしょう」(梨子田先生)
(文/篠原麻子)
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