思わず「ずっとリモートなんだから、こっちでも仕事できるかな」って言葉が自然に出たんです。そしたら夫はすぐさまネットで空き家を調べ始めて(笑)、見つからなかったので役場に電話したんです。「明日には内見できるって」ということで、翌日には内見して、次の月には転居していました。

プライバシーゼロの町は、子育てがしやすい町だった

――すごい行動力ですね! 運命を感じたのでしょうか。

 そうでもないんです。実は「失敗したら東京に戻ればいい」くらいの軽い気持ちでした。東京って、息をするだけでお金がかかるような場所ですよね。

 東京で1年分の家賃を払うのと、この町で1年住むのとでは金額が全然ちがって、往復の引っ越し代を入れてもおつりがくる。だから1年住んで東京に戻ったとしても、損はしないんです。それで「1年間だけのお試し」の気持ちで転居しました。

――海辺の町での暮らしは、東京とはまったく違う世界でしたか?

 もう全然違います。東京ではお隣さんの顔もろくにわからないのに、ここでは隣の家の親戚まで全員知っている(笑)。身元はバレバレです。

――ご近所さんとの距離が近すぎる生活は、プライバシーがなくて苦手という人もいますが……。

 私も苦手なタイプでした(笑)。でも、ここはめちゃくちゃ子育てがしやすいって、すぐに気づいたんです。

 引っ越しして間もなく、初めて会うご近所の方が息子をひょいと抱っこにしてくれて、「うちに寄ってく?」って。そこでごはんを食べさせてもらって、お風呂にも入れてくれて、「そこまでしてくれるの?」ってびっくりしました。

 その人だけでなく、町のみんな「子どもはみんなで育てるもんでしょ?」「それが当たり前」っていう雰囲気なんですよね。子どもにも自分にも、ものすごくいい環境だと思いました。

――朝ドラのワンシーンのよう(笑)。急に親戚が増えたような感じですか?

 そうですね。「夕飯、ようけ作ったから持ってきた~」とおすそわけしてもらったり、朝食の納豆やバターが切れたらもらいに行ったり。徒歩30秒圏内に仲のいい家族が4軒あるんですが、気づいたら息子がそこでごはんを食べてることが普通にあるんです。

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