子どもの治療は「難しい」
――ゲーム依存ではどのような治療が行われますか?
ゲーム依存の治療は世界的にも歴史が浅く、どんなふうに治療を進めれば効果的なのか、まだよくわかっていないのです。とりわけ12歳以下の子どもの治療に関する知見はほとんどありません。
精神科医による精神療法を中心にした治療が行われることが多く、当院では状況に応じて臨床心理士による個人カウンセリングやデイケアなどを組み合わせた治療を行っています。しかし「子どもならではの難しさ」もあります。
――なぜ子どもの治療は難しいのでしょう。
まず、ゲーム依存によって自らに起きている問題やその深刻さをきちんと理解できないので、「この状況から抜け出したい」「頑張って治療に取り組もう」といった、改善や治療に取り組むモチベーションが低い。我慢する力も弱く、ゲームを減らしたりやめたりすることがなかなかできません。また治療で使われる認知行動療法(心理療法の一つ)などは会話をしながら進めていくのですが、子どもは十分に言葉を理解できないので、子どもにもわかるように時間をかけて丁寧に治療を進めていく必要があります。
具体的な治療の流れとしては、本人の言い分を聞き、ご両親の意見も聞き、相談しながら治療計画を立てます。「次の受診日までにこうしよう」と約束を決め、達成できるように本人や家族をフォローアップしていきます。
依存の治療全般に言えることですが、少しでも改善していこうと努力する姿勢が見えたり、実際に改善が認められたりした場合には褒めて、本人にしっかりとフィードバックする――。この作業を積み上げていくことがとても大事です。
――治るまでにかなり時間がかかりますか?
何をもって「治る」とするかは、難しいところです。治療目標としてゲームを完全にやめるのが理想ですが、小学生に限らずどのような年齢であってもゲームをゼロにできたケースは非常に少なく、ゲームの時間を減らすことを目標に治療をするのが現実的です。
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