生きていく上での基礎学力が大事

安浪:私がもしこのお父さんと同じ立場だとしても、その状況からすぐ中学受験、という発想にはならないと思いますね。どうなるかわからないからこそ、生きていく上での基礎学力がすごく大事だと思うので、中学受験をする、しないに関わらず、基礎学力をつけることは重視すると思います。あと本人が好きだと思う好奇心の芽を育てたいので、好きなことをとことんやらせます。そして、やっぱりコミュニケーション能力ですよね。会話で語彙を増やすとか、塾などを頼らずとも家庭にできることっていっぱいあると思うので、特に低学年のうちはそのあたりの根本のところをしっかり育てようと思いますね。

矢萩邦彦さん

矢萩:僕もそう思います。まずは、本気で子どもと遊んで、対話する、でいいんじゃないでしょうか。今小2の女の子ですよね。だったら、お父さんと本気で遊んでくれて、本気で対応してくれるなんて5年後には難しいと思いますよ。

安浪:確かに。それはシンプルでいいかもしれないですね。

矢萩:うちの息子を見ていても、やっぱり動画を見たり、ゲームをやったりするのはこちらが本気で向き合ってない時です。本気で遊んであげている時はそうなりにくい。子どもと一緒に真剣に遊ぶ。それだけ意識してちゃんと実行するだけでもいろいろ見えてきますよ。

安浪:本当にそうですね。だから宣伝広告はあくまで宣伝広告だ、と割り切ってくださいね。あとは、可能であれば中学受験のメリットとデメリットをちゃんと調べられることをお勧めします。低学年のうちは、何となく中学受験塾に入っても何とかなっちゃうので「ま、こんな感じならいいか」「勉強はするにこしたことはないし」と軽く考えがちなんですよ。でも、4年生以降は学習量の内容も高度化し、常に点数や偏差値といった数字と隣り合わせになります。そういった先のことも知っておくと、もう少し客観的に判断できるようになると思います。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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