と“廃止”に胸を撫で下ろしていました。読書感想文は通常の作文とは違い、独特の書き方やポイントがあり、高度な文章力が求められます。そのためには練習が必要です。自由研究も同様です。本気で取り組む場合はどのような問いを立てるかが一番の要で、そこに高度なひらめきや考察力が求められます。これらを授業内で指導するにはあまりにも時間が足りません。
2020 年度から実施されている新しい学習指導要領でプログラミング教育や外国語教育が必修化され、コロナ禍も一段落ついて行事も復活し、学校現場の余力はゼロに等しいといっても過言ではありません。
先生たちの宿題チェックも大変
もう一つの事情は、教員たちの働き方改革です。2023 年、文部科学省が6年ぶりに教員の勤務実態調査の結果(速報値)を公表しました。これによると、前回調査(平成28年度)より労働時間が少なくなっているとはいえ、若い教員は11時間も働いていることが分かります。例えば午前7時半に出勤すると午後6時半まで学校にいる、という状況です。子育てしながら働く教員も多いですから、保育園の送迎などを考えるとなかなか厳しい状況にあります。
このような労働環境の中で、夏休み明けにクラス全員の感想文を読んで評価して返却したり、全員の自由研究をチェックしたりする「プラスα」はなるべく減らしたい、というのが実情です。
読書感想文、いる? いらない?
そもそも読書感想文は必要なのでしょうか。児童書を研究する児童文学者に訊ねたところ、
「読書感想文なんていりませんよ。子どもの読書嫌いを助長するだけ。なくなればいい」
と一刀両断で不要論を唱えていました。
子どもの「読書離れ」は、20年以上前から懸念されてきました。なんとかして本を読ませようと、2001 年には「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定されました。しかし動画メディアの台頭により実質的な読書離れは進む一方です。
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