茂山起龍(以下、茂山) 塾で指導をしていても、そのパターンは本当に多いと感じます。「20グラムで70円のものは、90グラムではいくらでしょうか」といった問題に対しても同じで、4.5倍をするのではなく、「1グラムはいくらか」を出そうとする。そして、「なぜそう考えたのか」と尋ねると、すぐに答えられない子どもが多い。「もっとわかりやすく考えればいいのに」と思うわけですが、彼らは公式が頭にあるせいで、わざわざ面倒な計算をしてしまうんですね。

迫田 算数で大切なのは「公式」ではなく、「定義」なんですけれどね。本質的な考え方をしたほうが最終的には楽だし、理解も深まるはずなのに、「公式に当てはめれば解ける」という成功体験をしてしまうと、どれだけ遠回りになっても公式を優先しようとしてしまう。「点数を取らなければいけない」というプレッシャーがありますから。

 ですが、本来は「解き方(途中式)こそが大切なんだ」ということを、親も講師も伝えていかなければいけない。答えを導き出すまでの過程には、偏差値には表れないその子なりの“思考”がある。「正しく考える」ことと向き合ってほしいですし、過程にこだわれば、結果的に実力がつき点数も伸びていくと思います。

「思考力」のある子は、何ができている?

――思考力のある子どもと、ない子どもの違いはなんだと思いますか。

迫田 決定的な違いがあるかどうかは、わかりません。ただ、「なぜそう考えたのか」をきちんと言葉で答えられる子どもはそれだけ深く理解ができている。そんな傾向はあると思います。僕はいま、中学・高校生を中心に指導していますが、復習する際も「もう一人の自分に説明するつもりで」と伝えています。人にわかりやすく説明できるようになって初めて、「復習が終わった」と言えると思うからです。

茂山 おっしゃる通りで、多量の問題を解くことで算数の点数を上げようとする考えは、本質から外れるのではないか、という思いが僕もあります。

迫田 そう、「家で何回解き直したか」は重要ではないですよね。

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