家庭教師は母親がつけさせたいことが多い

安浪:あります、あります。まず、お父さんが反対派だと、私が授業に行っても出てこないですね。ただ、せっかく子どもが頑張って勉強しているなら、お父さんにはとにかく足を引っ張ってほしくないんです。だから、お父さんのことを説得しようとは思わないですが、「本人はいまこう思っています」と子どもの気持ちを伝えたり、「いまこんなふうに成長してます」と状況を伝えたりする機会をもらえるよう働きかけます。親はみんなそうですけど、勉強を通して子どもの成長や変化が見られるのはやっぱりうれしいんですよ。あとはお母さまがちょっと熱心になっちゃって息子さんも息抜きが必要だから、お父さまがそういうときにうまいこと息抜きさせてくれるとすごくいいと思います、とか。

矢萩邦彦さん

矢萩:なるほどね。家庭教師は安浪さんほど経験はないですが、僕も年に数件お受けしていたことがあるんですね。そのときに失敗したな、と思った経験なんですが、お母さんからの依頼であるご家庭に指導に行ったんです。で、初回の授業が終わった後にお父さんが出てきて、「先生、一杯どうですか」って言われたんですが、たまたま次の予定があったのでお断りしてしまったんです。そしたらその後受験までの1年間、一切お父さんは口を出さなくなってしまって。たぶん、受験はもう俺の管轄じゃないな、母親と子どもとあの先生でやればいいんじゃない、って思ってしまったのかもしれない。まあ、受験はうまくいったからよかったんですけど。それからはお父さんからのアプローチがあったら短い時間でも絶対受けるようにしています(笑)。

安浪:いやあ、それは失敗じゃないですよ。たまたまそういう人だっただけで。

矢萩:でもお父さんとサシで向き合う時間を作ると、授業が終わった後、お父さんもちょっと顔を出してくれたり状況をシェアしてくれたりして、お互いやりやすくなるんですよね。

安浪:さまざまなご家庭の話を伺っていると、やっぱり家庭教師はお母さんがつけたいと思うことが多いんですよね。逆にお父さんからは、家庭教師はお金がかかるし、家庭教師が入っていったい何ができるのか、とか、なぜそれだけの授業時間が必要なのか話を聞きたいと言われることが時々あります。そこで私が具体的に説明すると、お父さんはわかりました、あとは先生にお任せします、とあっさり認めてくださることも多いです。だから、特にお父さんの場合は、理路整然と話をすることってすごく大事だなと思います。

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