――『そそそそ』に登場する動物の種類や物語の流れはどのように考えましたか?

 まずは種類や色合いのバランスを考えながらいろいろな動物をリストアップして、それぞれの動物に「させたい動き」を考えました。漫才と同じで、初めにインパクトの強いネタを出すとそこから先が尻すぼみになるので、動物の登場順序はなるべく後半に向けて盛り上がるよう意識したつもりです。

 挿絵を描く上で意識したのは、動物がかわいく見え過ぎないようにすることです。僕が目指すのは「一見かわいくないんだけど、何度も見ていたらかわいく見えてくる」という感じ。だから愛らしさが強調されるような生きた「目」は、あえて描かないようにしています。コアラも基本的にはすごくかわいい哺乳類ですが、たくさん集まって足が伸びると、まぁまぁ不気味になる(笑)。そこが、気に入っていますね。

 登場するキャラクターの描き方には、ほかにも結構こだわりがあります。お寿司が登場する作品を描いたときは、にぎりや軍艦巻きがかわいいキャラ風に見えないように、敢えてぬめっとした“なまもの”感を出したり、陰影をしっかり描いて威圧感を出したりといった工夫をしました。こういう話をすると「気持ち悪いものが好きな人」みたいに思われるかもしれませんが、僕自身は虫が苦手だし、同じものがたくさん集まった「集合体」もダメで、渋谷のスクランブル交差点を歩く大勢の人を見ただけでゾワっとするほど(笑)。でもその嫌悪感の少し手前にある、言葉にできない違和感や面白さを表現したいんです。

――そこまでこだわりがあると、描くのに時間がかかりませんか?

『そそそそ』はアイデアが出たところから1年程度なので、僕の作品の中では短い時間で仕上がった方です。『ねこいる』という作品では、納得がいく仕上がりになるまで、5回くらい描き直しましたから……。

――『そそそそ』は、文章が少なく、効果音が多い絵本です。読み聞かせのポイントがあれば教えてください!

 好きに読んでくださって構いません。例えばタイトルの読み方も「そ、そ、そ、そ」とゆっくりでも「そそそそ」と16ビートでもいいですし、もっと「そ」を増やして「そそそそそそそそ……」としちゃってもいいです。決まったストーリーがある絵本ではありませんし、余白もたっぷりあるので、なんなら子どもと一緒に考えた物語をどんどん書き足していただいても。そして余白がいっぱいになったら、2冊目も買っていただければ……(笑)。保護者の方にも子どもたちにも、自由に読み聞かせを楽しんでもらいたいです。

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