コロナ禍での就活は?

――2020年、2021年など近年の就活はどうでしょうか。

 ここで大きく影響しているのが新型コロナウイルス感染症の大流行です。文系1位がJTBグループ、理系1位がソニーだった2020年(2021年卒)調査は、2019年秋から2020年春までに行った関係で、コロナ禍前のランキングと考えてください。ですので、JTBや航空会社がまだギリギリ文系上位に残っていますけれど、2021年(2022年卒)調査になると完全にランキングが様変わりします。コロナ禍の影響を受けた航空系や旅行系が文系10位内から姿を消して、相対的に順位を下げました。

――代わりにどんな企業が人気に?

 この年の特徴として、文系に関しては、東京海上日動火災保険、第一生命保険、損害保険ジャパンと、保険業界が躍進しています。理由についてはいろいろ分析できますが、ひとつの要因として、コロナ禍という不測の事態やリスクを経験したことで、リスクから個人や企業の安心を守るという保険商材に学生の目が向いたこと、また業界もその点を学生に強くPRしたことがあると思います。その結果、上位に挙がってきていると考えられます。

 理系に関しては、2020年調査と大きく変わった感じはしません。引き続き食品業界は人気で、味の素や明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)が入っていますし、NTTデータやシステムインテグレーションもやっている富士通などIT系も根強い人気です。

――こうやって見ていくと、就職人気企業ランキングは時代を映す鏡でもありますね。

 そうですね。80年、90年は文系だと景気の影響もあって「銀行・証券」「商社」が人気を集め、理系だと「自動車・輸送用機器」「電子・電気機器」といったモノづくり日本を象徴するような企業が人気でした。ある意味、特定の業界に人気が集中していましたが、コロナ禍があり、VUCA(※)の時代とも言われるようになって、近年は「どの業界か」ではなく、変化に対応できる企業体力とか、企業としての成長性などが学生たちの着目点になってきていると感じます。

※VUCA  Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。将来予測が困難な状態を指す。

(聞き手/八木沢由香)

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