茂山 豊島岡女子学園のような、“難関”と言われる中学が英語資格入試を新設したことは、英語入試の導入が広がるきっかけの一つになる気がしています。ほかの学校を見ても、たとえば三輪田学園のように2024年度までは英検4級で加点がありましたが、25年度からは3級からの加点になるなど、加点の基準を厳しくする中学も出てきています。ただ、ほかの科目と異なり、小学校で習う範囲が明確ではないので、もっとも対策が難しい“範囲のない科目”になってしまう懸念がありますね。
中学入試に英語を導入するメリット・デメリットは?
――中学受験に「英語」を導入することのメリット・デメリットはどう考えますか。
迫田 子ども英会話サービスを運営していることもあり、幼いころから英語に触れること自体には賛成です。ピアノだって水泳だって、みんな幼いころから始めますよね。英語も幼いときから触れていたほうが有利だと僕は感じています。「AIが翻訳してくれる時代に、英語は役に立たない」という意見もありますが、「役に立つかどうか」という視点だけで、習いごとを選んでいるわけではないですよね。本人に余裕があり、状況や環境が許すのであれば、なんでもやってみればいい。英語もその一つだと思うわけです。
ただ、英語が「中学受験を突破するためのツール」になってしまうことには懸念があります。
茂山 中学入試に導入されるデメリットとしては、「なんとなく好きだから、楽しいから英語に触れておく」のではなく、「中学受験で点数を取るために英語を勉強する」という流れが生まれること。そして、今の中学受験に起きている「より低学年のうちから学習塾に通う」という傾向が、英語を導入することによってさらに早まるのではと懸念されることです。算数や国語などに比べ、「もっと小さいころから受験に備えられる!」と、保護者の早期対策がどんどん過熱していく可能性があるのでは……と。
ただ、幼いうちから英語を始めること自体には僕も賛成です。なので、意欲的に英語に取り組んできた生徒がメリットを感じられるような形式で、中学受験のなかに組み込まれていくのがいいのでは、と思います。たとえば、国算理社の4科目を必須とするだけでなく、「理科・社会」を「英語」に置き換え、300点満点にする。つまり、国語100、算数100、理科50、社会50の配点だったところを、国語100、算数100、英語100にし、生徒側が選択できるようにするとか。
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