それでも、2月2日、3日で受けた上位校ではすべて合格を手にしたので、素地はあったと思います。算数が得意で、受験勉強をしながら公文にも通い続け、小6の時点で高校1年の数学にまで進んでいました。いわゆる”天才タイプ“ではなく、間違いなく努力を重ね、力をつけていった生徒です。
中3の秋、彼が持ってきた全国模試の結果に「心底驚いた」
――その後、どのような中学生活を送っていたのですか。
国立の中学に進学し、中2の半ばまで僕の塾で個別授業を受けていました。うちの塾は中学受験専門ですが、元生徒については、中学入学後も勉強のサポートをしています。「高校はどうするつもりなのだろう」と周囲のスタッフと話していた中3の秋のある日、全国模試の結果を持って塾にやってきて、その結果がとてもよくて、心底驚かされました。その後、高校受験で私立男子のトップ校に進みました。
――成績が伸びた要因は何だったと思いますか。
彼には、中学受験よりも「高校受験」が向いていたのかもしれません。数学が得意だったこともあり、中学でも成績がどんどん伸びていきました。中学受験で第1志望校に届かなかったことで「次は負けたくない」という気持ちも芽生えた。「自分なら第1志望に受かる」と過信していた部分もあったでしょうから、相当に悔しかったはずです。基礎の大切さを知り、後がない状態になった高校受験で、力が最大限発揮されたのだと思います。
また、国立の中学を選択したことも功を奏したと思います。私立の中高一貫校から高校受験を選択する生徒もいますが、圧倒的に少数派。多くの人が高校受験に挑む環境は、彼にとってプラスに作用したと思います。
「次のステージではうまくいくよ」親の姿勢が子を後押し
――親御さんの姿勢で、印象的だったものはありますか。
お母さまは、他人にどう思われるかよりも、お子さんの個性や性格を大切にしていた。思うような結果が出なくても、「うちの子はできないから」といったネガティブな言葉を発することはなく、逆に周囲に褒められて謙遜(けんそん)することもありませんでした。
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