中学受験で、第1志望校に合格できるのは3人に1人と言われています。また、同じ試験がもう一度あったら合格者の半分が入れ替わるとも――。都内で中学受験指導塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんは、教え子と交流を続けるなかで、生徒たちの“その後”を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は、10連敗しながらも、熱望した第1志望校に合格した子のエピソードから、子どもの「絶対に受けたい」という気持ちと頑張りを認める大切さ、について考えます。
【無料マンガ】「お前なら大丈夫だ!」中学受験で5連敗中だった母娘が自信を取り戻した言葉とは9戦9敗でも第1志望に挑戦!
――前受け校はすべて不合格でも第1志望校に合格した生徒、何回目かの入試で合格を手にした生徒……。不合格からの逆転という意味で、印象に残っている生徒はいますか?
1月に中学入試が解禁となる埼玉、千葉で9校受験し、すべて不合格。その後、2月1日に行われた第1志望の午前入試で不合格となった後、午後の算数1科目入試で合格を手にした女子生徒がいました。その学校で、算数1科目の入試が行われるのはその年が初めて。過去問も存在しない状況だったうえ、算数は彼女が最も苦手としていた教科でした。
彼女は僕の塾に4年生のときから通っていて、「第1志望校には行きたいけれど、勉強はしたくない」という状態。正直、僕は第1志望の進学は厳しいと感じていましたし、親御さんにも「この状態で受験しても合格は難しいだろう」と伝えていました。
1月の前受けでは、持ち偏差値よりもポイントの下がる学校を受けたにもかかわらず、不合格。自分の望む学校に挑んでほしいと思ってはいたものの、私立の進学先がどこにも決まらないリスクを考えると、「2月1日は偏差値のポイントが下がる学校を受け、そこで一つ合格を手にしてから、2月2日に第1志望を受けるのはどうか」という話をしていました。
――9戦9敗してからも、第1志望に果敢に挑戦したのですね。
親御さんは、1月の結果を受け、2月1日は偏差値を下げた学校を受験できるようにしようと考えていらっしゃいました。僕自身も、本人や親御さんに、リスクを取らない方向を提案したところ、その場で彼女は泣き出した。その様子を目にし、親御さんは「やはり2月1日は第1志望校を受けさせたい」と。
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