四谷大塚や日能研の偏差値で60くらいになると、首都圏模試では偏差値70を超えてしまうので、難関校の判定は精度が高くないといわれます。逆に中堅校までの偏差値の判定には首都圏模試が利用されます。SAPIXの場合は、中堅校以下を志望する受験生が少ないため、データ不足で偏差値がでない学校もあります。
つまり受験する学校に合わせた適切な指標を使うことが大切になります。
「わが子に合う学校」と「偏差値の高い学校」は別のもの
――確かに、XなどのSNSでは、自分や志望校の偏差値を記載する場合に、「偏差値50」とは書かずに、「S50」(SAPIX)、「Y50」(四谷大塚)、「N50」(日能研)、「首都50」(首都圏模試)と書かれているのを見かけます。
偏差値は相対評価ですので、全体のどの位置にいるのかを理解するための指標です。模試を受ける受験者層の違いによって、結果が左右されることも理解しておく必要があります。
さらにいえば、子どもの偏差値を知るには、一度の模試の成績だけでは判断できません。例えば四谷大塚の「合不合判定テスト」は、6年生で6回行われます。その6回ですべての範囲を網羅できるように作られているそうです。
ですから、複数回の試験を受けた結果の平均の偏差値が、いわゆる「持ち偏差値」という、子どもの学力の指標になります。模試のたび、毎回の偏差値の上下に一喜一憂することなく、トータルで判断する必要があります。さらに、学校選びには、学校の教育方針や校風、男女別学か共学か、管理型なのか自由型なのかなど、選ぶ物差しはいろいろあります。偏差値はあくまでも目安でしかないことを親御さんが理解しておくことが大切です。
一般的に、偏差値の高い学校が「いい学校」と見なされることがありますが、「わが子に合う学校」と「偏差値の高い学校」はまったくの別のものということを忘れずに、学校を選んでほしいなと思います。
(取材・文/栗山琢宏)
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