『ねないこだれだ』など、シンプルな貼り絵と独特のストーリーで知られる、せなけいこさん(92)。制作中のおうちでは、どんな風景が繰り広げられていたのでしょうか。絵本のモデルにもなり、絵本作家でもある娘のくろだかおるさんにお話を聞きました。「AERA with Kids 2024年春号」(朝日新聞出版)からお届けします。
【写真】貴重!せなけいこさんの原画やスケッチはこちら(全9枚)ありのままの姿が絵本のモデルに。子どもの世界は甘くない
母はお気に入りの絵本に出合うと「本は個人的なものだから、一人一冊にしましょう」と言って、私と兄と母の分の3冊ずつそろえていました。当時は不思議だなと思っていましたが、大人になって家を出るとき、自分の好きな本を持っていけたのはよかったです。
読み聞かせも思い出です。淡々と読む母と、情感たっぷりに演じてくれた落語家の父(故・六代目柳亭燕路)。母は英語の絵本を適当に訳していたようで、後に言語学者になった兄(黒田龍之助)が「だいぶ間違っていたよね」と言っていました。言葉にひかれた兄に対し、私は物語に夢中。同じ本でも、子どもが影響を受ける部分は違うものですね。
母は貼り絵で絵本を制作するので、どんな紙も大切に扱うことがわが家では当たり前。『ねないこだれだ』に登場する女の子の黄緑色のパジャマの柄は、税務署から届く封筒の裏側です。税金の使い道に怒りながら、使っていました(笑)。
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