発達障害(※1)の子どもは学校生活のなかで、どのような思いや生きづらさを抱えているのでしょうか? 『透明なゆりかごー産婦人科医院 看護師見習い日記』(講談社)、『毎日やらかしてます。』シリーズ(ぶんか社)などで知られる人気漫画家、沖田×華(おきた・ばっか)さんは、小中学生のころ、学習障害(*2)、ADHD(注意欠如多動症*3)、アスペルガー症候群(*4)と診断されました。小学生時代、あり得ない忘れものの多さなどから先生によく怒られ、級友からも「変な生き物を見る」ような扱いを受けていたという沖田さん。当時のことを振り返って「先生にしてほしかったこと」「親にしてほしかったこと」を、教えてもらいました。発売中の書籍〈黒坂真由子著『発達障害大全 「脳の個性」について知りたいことすべて』(日経BP社)より一部抜粋・再編集〉のインタビューより、当時のエピソードを紹介します。【前編】〈「透明なゆりかご」の漫画家が語る子ども時代 「発達障害の私はタヌキの子。人間になりたかった」〉はこちら。

MENU 先生から見たら「怠けているだけの生徒」 「普通の子ども」は「ロボット」っぽい 耳の聞こえが悪いと疑われ・・・ 「天才」の時期があったから、諦められなかった母

先生から見たら「怠けているだけの生徒」

ーー振り返って、小学生のときに「先生がこうしてくれたらよかったのに」と思うことはありますか?

沖田:言うことを聞かせようと、思わないでほしかったですね。その子にはその子のペースのようなものがあって、同調圧力で「みんなに倣え」みたいなのは難しい。みんなと一緒に教室にいるのがきつくて、図書室や保健室のような「ちょっと落ち着いた場所」に「リヤカーで運んで置いていってほしい」と思っていました。

ーー構われるよりは、放っておかれたほうがいい感じでしょうか?

沖田:そうです、そうです。構われてる理由が分からないので。ちょっとクールダウンしたいときは、よく自主的に図書室に行っていたんですけど、傍からは、どう見ても遊んでいるようにしか見えないんですよね。そのころは先生たちに発達障害に関する知識もありませんでしたし。

 だからどの先生が見ても、私は「ただ怠けているだけの生徒」なんですね。授業ではぼーっとしてるし、ノートも取らないし、話も聞いてないし、頭も悪い。そのくせ、口答えばっかりする。「何でノートを取らないんだ!」と言われて、「いや、鳥の声がうるさいんです」とか言って。でも、本当にうるさかったんです。

ーー実際にそう聞こえるってことですよね。聴覚過敏もあったんですね。

沖田:そうなんです。「2階の生徒の声がうるさいです」とか言って。集中できない理由はたくさん言うことができるんですけど、先生はそういうことを求めていないじゃないですか。

ーーそっか、そうですよね。先生から「ノートが取れない理由」を問われたときに、沖田さんはちゃんと「理由」を答えているのに、先生には口答えに聞こえてしまうんですね。

沖田:「そんなことを気にするからダメなんだ。ちゃんと目の前のことに集中しろ!」と言われるんですけど、私、シャープペンの芯や鉛筆が紙にこすれる音ですら気になって仕方がなくて。みんな、こんなやかましいなかでどうして真面目に勉強できるんだろうって。

ーー小さいころは、みんな自分と同じだと思っているものですよね、きっと。

沖田:だから、こんなうるさいなかで集中できる周りの子たちが、信じられませんでした。

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黒坂真由子
黒坂真由子

編集者・ライター。埼玉県川越市生まれ。中央大学を卒業後、東京学参、中経出版、IBCパブリッシングをへて、フリーランスに。ビジネス、子育て、語学などの書籍を手掛ける傍ら、教育系の記事を執筆。絵本作家せなけいこ氏の編集担当も務める。

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