お口ぽかんは歯が並ぶスペースが狭くなる可能性が高まる

 例えば、「ごっくん」と物をのみ込むとき、口蓋(こうがい:上顎、口の中の天井にあたる部分)の粘膜にのせた舌に、圧力がかかります。

「のみ込む動作は1日に2000回以上、行われるため、舌によって繰り返し上顎に圧力をかけることが、上顎を広げます。上顎が広がると永久歯の生えるスペースができ、歯がきれいに並びます。一方、例えばお口ぽかん、の状態で口呼吸が続くと、舌の力が弱くなり、舌の位置がのどのほうに落ちて、上顎を押すことができません。このため、上顎の成長が抑制されて、歯が並ぶスペースが狭くなるリスクが高まるのです」

 また、下顎の成長にはかむ筋肉である「咬筋(こうきん)」の働きが欠かせません。咬筋は咀嚼筋の一つで、下顎の骨を上に引き上げ、上下の歯をかみ合わせる働きを担っています。

「しっかりかむことはもちろんですが、正しいのみ込み方ができることも大事です。実は口腔機能発達不全症のお子さんは、のみ込む動作が、赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲むときののみ込み方である『乳児型嚥下(えんげ)』になっていることが多い。こののみ込み方で食事を続けていると、下顎の成長が抑制され、顎が小さくなってしまいます」

 正しいのみ込み方では、のみ込む瞬間に奥歯を噛んで、舌の先を口蓋に押し付けながら、飲み込みます。一方、乳児型嚥下をしている子どもは、飲み込む瞬間に上下の歯が離れ、舌を前方に突き出しています。

「ためしに口を少し開いた状態でそこから舌を出し、つばをのみ込んでみてください。とてもつらく、のどに唾がつかえそうになるのがわかると思います」

 正しく口の機能が発達していないと、「クチャクチャと音をたてて食べる」「食べ物をこぼす」「発音や言葉がうまく発せられない」などの問題も起こってきます。

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