オーラルフレイルに移行しやすいことも

「成人でも、舌足らずの話し方やクチャクチャと音を立てて食べるクセを指摘された人はいるでしょう。実はこのような人たちの中には、口腔機能発達不全症を持ったまま大人になったケースが多いと考えられるのです。口腔機能発達不全症があると、年をとってから、オーラルフレイルに移行しやすいこともわかっているのです」

 フレイルは「Frailty(虚弱)」を意味する言葉。高齢になって要介護の危険が高まりつつある状態をさします。「オーラルフレイル」はこのフレイルが口の機能にも起こっている状態、つまり、「口の老化」です。

「オーラルフレイルが進むと、食べたり、飲んだりが困難になり、高齢者の代表的な死因の一つである『誤嚥性(ごえんせい)肺炎』につながることもあります。このようなリスクを減らし、お子さんのお口の健康を育てるためにも、口腔機能発達不全症を改善することは大事です。成長期の子どもは、顎もどんどん動きますので、体操やセルフケアで、よくなっていきます。歯科にやってくる患者さんは永久歯が生え始める5~6歳ごろからが多いですが、これ以降でも、できることはたくさんあることを知ってほしいと思います」

気づくためのサインとは

林歯科医師に口腔機能発達不全症のサインを挙げてもらいました。

 このうち、多く見られるのが「⑤テレビなどを見ているときにお口がぽかんとしている」と「⑥いつも唇が乾いている」です。これらは口呼吸のサインでもあります。

「お口ぽかんのある子は顎が緊張したり、顎の下が緩んで二重顎になったりしていて、赤ちゃんのような顔貌です。また、唇は富士山のような山形で、『ドライウェットライン』(下唇の乾いているところと、ぬれている部分の境界線)が明確なのが特徴的です。なお、お口がうっすらとあいている、舌先が見えている、なども口呼吸をしている可能性が高いです」

お口ぽかんの例 出典:「どう診る?どう育てる? 子どもたちの歯列と口腔機能」(クインテッセンス出版株式会社)

 もう一つは「⑨  寝ているときにいびきや歯ぎしりがある」です。

「『歯ぎしり』が続く場合、日中も歯をくいしばっている可能性が高く、口の周囲の筋肉が過度に緊張するために、口の機能に影響が起こります。くいしばりは大人に多いと注目されてきましたが、近年、子どもにも増えていることが学会で話題になっています」

 9つのサインのいずれかに当てはまる場合は、歯科医院で診てもらいましょう。

「歯科では食べる機能、話す機能、そのほかの機能などについて、お子さんや保護者に問診を行います。また、ガムをかんでもらって舌の動き、食べ方や飲み方を確認したり、口の中の写真を撮ったりします。診断の結果、口腔機能発達不全症と診断された場合は、『口腔筋機能療法』(MFT)というトレーニングを保険診療により、受けることができます」

 口呼吸の原因が扁桃肥大(へんとうひだい)やアレルギー性鼻炎であるなど、体の病気が原因の可能性がある場合には、耳鼻科など専門の医療機関へ紹介します。

 なお、口腔機能発達不全症の診断・治療は小児歯科や小児矯正歯科の専門医院で受けるのがいいということです。

(取材・文/狩生聖子)

チェックポイント 林亮助歯科医師の取材をもとに編集部で作成
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