育児休暇480日の中の90日間は父親に、90日間は母親に割り当てられ、取らなければその分の休暇はなくなることになっているのも、男性の取得率を上げている大きな要因。男性が90日間取得しない場合は、その期間の給付金がもらえないというルールまであり、「休まないといけない環境」がちゃんと整っているのです。

住んでいる集合住宅の中庭で、子どもと遊ぶマッツさんと妻リーネさん

さらに整ってきた 北欧の最新育休制度

 ちなみにアイスランドでは母親、父親とも子どもひとりにつき、6か月ずつの育児休暇を持っていて、このうち6週間のみお互いに譲ることができるように2年前(2021年)に法律が変わりました。つまり、4か月半、父親が育児休暇を取得しないと、この分の休暇は消えてしまうというわけです。アイスランドのルールが、北欧の中でも父親の育児休暇の日数がいちばん多いという状況。デンマークでも父親の育児休暇の日数が2週間から11週間に昨年(2022年)増えたばかりです。ますます、父親が自然と育児に取り組める環境が北欧では整ってきています。

夫と共有した子育ては人生の「お守り」に

 いったん北欧のことを置いておいて、わが家の話をさせてもらうと、わたしたちは日本で出産をしました。夫はフリーランスで働いていて、できるだけ仕事を抑えてもらっていたものの、実際に完全に休めたのは産後の2週間のみ。夫の両親はスウェーデン、わたしの両親は自宅から車でも3時間かかる距離ということもあり、育児の中心を担うのはわたしでした。とはいっても、夫は自宅で仕事をしていたこともあり、オムツ替えから寝かしつけ、お風呂入れまでひととおりのことはいっしょにやっていました。

 すべてがはじめてだらけの毎日に戸惑い、片付けても片付けても散らかる部屋にイライラしたり、つくったごはんを子どもが食べてくれずに落ち込んだり。自分の時間が取れないことにもやもやした日もありました。また、それとは反対に、寝かしつけがうまくいったときはハイタッチで喜び、子どもの寝顔をかわいいねぇとしばらくいっしょに眺めていたことも。

「幸せ」と「辛さ」がごちゃまぜだったあの日々を、夫とふたりで共有できたことは、ちょっとおおげさかもしれませんが、これから人生をいっしょに過ごしていく中で、お守りみたいなものになっていくんじゃないかなと思っています。

 北欧のひとたちが夫婦の育児を大事にする理由もこんなところにあるのかもしれません。

北欧の日常、自分の暮らし - 居心地のいい場所は自分でつくる - (正しく暮らすシリーズ)

桒原 さやか

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