これまでにないモササウルス類の特徴がいくつも明らかに
クリーニングされた化石をもとに、小西卓哉さん(シンシナティ大学教育准教授)を中心に研究が進められていった。そして、この動物がこれまでにない体の特徴を持つ新属新種(※1)であることが明らかになり、「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」という学名と「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜/※2)」の通称がつけられた。生息していた時代は約7200万年前、全長は約6mと推定されている。明らかになったワカヤマソウリュウの大きな特徴をあげると、次のようになる。
①前後のヒレが異様に大きい
②背ビレがあった可能性がある
③両眼視(両眼で同時にものを見ること)ができていた可能性がある
④あごの骨がややきゃしゃで歯も細め
こうした特徴から描き出されるワカヤマソウリュウの姿を、小原さんに解説してもらおう。
「これまでモササウルス類は、尾ビレを左右に振って前に進む推進力を得ていたと考えられていましたが、①からこの動物は、主に前ビレで推進力を得ていたと考えられます。現在の動物ならウミガメやペンギンに近い泳ぎ方です。③④からは、両眼視により、ものを立体的に見られるので、大きな獲物にかみつくのではなく、素早く泳ぐ小魚をとらえていた可能性が高いと考えられます。モササウルス類にもさまざまなタイプがいたことがわかっていますが、ワカヤマソウリュウはこれまでの想像の域を超えた新種といえると思います」
今後、研究が進んで、モササウルス類やこの時代の地球の謎がさらに解き明かされるのが、今から楽しみだ。
(文/上浪春海)
ジュニアエラ 2024年 3月号 [雑誌]
朝日新聞出版
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