発掘された大量の化石を中学校の空き教室で5年かけて「クリーニング」

 2010年の12月には自然博物館による本格的な発掘が始まった。化石発見場所は山の中なので、パワーショベルを通す道路づくりからスタートし、岩盤(岩石でできた地層)から化石が含まれている岩石を割って切り出し、運び出した。この作業に4カ月ほどかかった。

化石の発掘現場。化石の表面をよく見るために水で洗っているところ(画像提供/和歌山県立自然博物館)
発掘現場から掘り出された、化石を含む岩石のひとつ。石が割れてしまうことも多く、後でつなぎ合わせられるように番号がつけられている(画像提供/和歌山県立自然博物館)

 ふつう化石は岩石の中に埋まっているので、化石の周りの余分な石を取り除く「クリーニング」をしなければ、どこの骨か、どんな姿の動物なのかが見えてこない。クリーニングは、中の化石を傷つけないように細心の注意が必要なだけでなく、今回のモササウルス類の化石は、周りにとても硬い石がついていたので、11年5月に始まった作業には長い時間がかかった。発掘とクリーニングを指揮した自然博物館学芸課長の小原正顕さんはこう振り返る。

細心の注意をはらい専用の器具を使ってクリーニングする(画像提供/和歌山県立自然博物館)

「現場から運び出した大小の岩石のかたまりは、中学校の空き教室に置かせてもらいましたが、その量は教室の半分を占めるほどでした。クリーニングにあたっては、発掘現場で割れた岩石を元のようにつなぎ合わせ、ブロックごとに化石の周りについた石を削っていきました。量も多いし石も硬いので最初はどうなるかと不安でしたが、5年かけてクリーニングを完了することができました」

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