「得意」を見つけ伸ばすことを基本戦略に

ーーああ、やっぱり遺伝の要素は強いんですね。

高橋氏:でもこれは、例えば、「息子さんのLDは、黒坂さん(インタビュアー)のせいです」と言っているのではないんです。息子さんは、いろいろな遺伝子の組み合わせで決まる個性を持って生まれてきた。

 ですから、息子さんは、息子さんのペースで、日常生活に支障がない程度に読み書きの練習をすればいいのです。得意な子に追い付けはしないけど、やったらやったなりに伸びるという感覚を身につけさせてあげることが大切です。

 僕の趣味はマラソンで、オリンピックに出られるわけではないけど、トレーニングを続けていれば進歩があって楽しい。水彩画だって、最初は下手でも、だんだん遠近感のある絵が描けるようになる。その「右肩上がりの気分」を、小学生の間に味わわせてあげれば、自己肯定感は下がらないはずです。二次障害(*6)が起こることもありません。

 さらに、遺伝的素因ということを正しく理解して、それをプラスの方向に生かせたらいいですね。苦手なことを無理に克服しようとせずに、得意なことを見つけて伸ばす。そういう人生を歩めるように環境を整えるのが人生の「基本戦略」です。

※『発達障害大全 「脳の個性」について知りたいことすべて』(日経BP)より一部抜粋

【後編】〈子どもの発達障害の「早期診断、早期診断」に警鐘 小児科医が考える「最悪の虐待」とは?〉に続く

発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて

黒坂 真由子

発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて
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黒坂真由子
黒坂真由子

編集者・ライター。埼玉県川越市生まれ。中央大学を卒業後、東京学参、中経出版、IBCパブリッシングをへて、フリーランスに。ビジネス、子育て、語学などの書籍を手掛ける傍ら、教育系の記事を執筆。絵本作家せなけいこ氏の編集担当も務める。

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