中学入試には、その学校の「顔」が見えるような問いも出題されています。学校選びの指標として、過去問を活用する手もありそうです。首都圏の中学・高校入試の過去問を扱う声の教育社常務取締役・後藤和浩さんに、昨今の入試で出たユニークな問題や、社会情勢を反映した新しい問題の傾向を聞きました。

MENU 塾の勉強だけでなく、身の回りのことにも関心を 入試はその学校の「1時間目の授業」

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 2023年度の中学入試で、特徴のある問題をいくつか見てみよう。

 ヒューマニズムを感じさせるのが、慶應義塾湘南藤沢(神奈川県藤沢市)の国語の問題。「砂糖の過剰摂取は体に悪いから」という理由で、砂糖を使った一部の商品に課税することに対して、反論を述べさせている。

開智の23年度入試 先端Aの社会から抜粋/声の教育社提供

 開智(さいたま市)の23年度入試(先端A)の社会では、被告人、裁判官、検察官、弁護人らのほか裁判員が複数並んだ現代の裁判の様子を描いたイラストを載せ、現在の日本の司法制度と江戸時代とを比較。悪事を認め観念した悪者に対し処罰を下す江戸時代の水戸黄門の「正しさ」は、現代の裁判と比べてどんな危険性があるのか、説明をさせる問題が出された。

 浦和実業学園(さいたま市)の適性検査からは「森」や「品」など、同じ漢字3個で構成される品字様(ひんじよう)を自分で創作し、その成り立ちを説明させる問題が出された。

塾の勉強だけでなく、身の回りのことにも関心を

 例年、日本の伝統や日常の生活などについて出題するのが、慶應義塾普通部(横浜市)だ。23年度入試では、理科でニボシ(カタクチイワシ)を使ったおせち料理について問われた。同様に桜蔭(東京都文京区)の理科も、おせち料理や七草がゆについて触れ、材料が植物由来のものを選ぶなど、生物学的な観点から問う問題が出された。

「塾での勉強だけでなく、身の回りのことにも関心を持ってほしいという学校からのメッセージだと考えられます」

 ジェンダーについての問題も、最近のトピックのひとつだ。

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柿崎明子
ライター 柿崎明子

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