「男子校の国語で取り上げられる物語は、男子が主人公の場合が多いのですが、麻布(港区)では数年前に女子が主人公の小説を取り上げました。しかも思春期の繊細な女子の心の機微を問うような内容だったのです。ほかにも、自認する性との不一致やスカートをはきたい男子を取り上げる学校などもありました」

23年度 日本女子大学附属の社会の入試問題から抜粋/声の教育社提供

 23年度入試の日本女子大学附属(川崎市)の社会の問題では、1999年2月の新聞の求人広告が掲載された。当時と比較して、現在はどのような求人方法に変わったのかを問う内容だった。新聞広告には、応募の条件として性別や年齢が設けられているが、2006年に男女雇用機会均等法が改正されたことなどにより、現在は年齢や性別による制限が原則禁止になっている。その時代の変化をきちんと読み取ることができるかを問うている。

 横浜創英(横浜市)の国語では、毎年1枚の写真が提示され、その写真はどのような場面なのか「写真を見ていない人にもわかるように説明しなさい」という記述問題が出されている。

 後藤さんは、こう話す。

「数年分の過去問を見て練習を積めば、必ずできるようになる問題です。つまり、きちんと準備して臨んでほしいという、学校からのメッセージでもあります。志望校の特徴ある問題は、しっかりと過去問と向き合って練習をしておいたほうがいいでしょう」

入試はその学校の「1時間目の授業」

田園調布学園の23年度入試問題(算数1科)から抜粋/同校ホームページより

 田園調布学園(世田谷区)の23年度入試の算数1科では、算数と理科(物理)の教科横断型の問題が出された。異なる長さの糸の先にビー玉をつるして作ったふりこを10個並べ、同時に元の位置に戻る時間を求める問題で、この計算の円周率をあえて3と決めており、計算力よりも思考力や表現力を重視していることがうかがえる。

「すでに入試から、同校の授業の特色でもある教科横断型の問題を取り入れています。入試はその学校の『1時間目の授業』でもあるのです」

 最後に、24年度の入試を受ける受験生へのアドバイスを後藤さんにたずねた。

「入試期間中、受験していない学校の本年度入試が手に入ることもありますが、正答や解説が得られないのなら、解こうとはせずに時事問題を確認するにとどめておきましょう。わからない箇所は、すぐに解答や解説を確認して」

 そして、こうエールを送る。

「問題はすべて解けなくても大丈夫です。今までやってきたことを解答用紙に置いてくる気持ちで、落ちついて臨んでください」

(取材・文/柿崎明子)

著者 開く閉じる
柿崎明子
ライター 柿崎明子
1 2