「三度の飯より過去問が好き」というのは、首都圏の中学・高校入試の過去問題集を販売する、声の教育社常務取締役の後藤和浩さん。編集者時代には毎年250校、500回以上の入試問題を解いたという逸話を持っています。そんな、中学入試問題をこよなく愛する後藤さんが教える、最近の問題傾向や、過去問の上手な生かし方とは。

MENU 記述問題も思考力、表現力を問うものに 入試問題との相性も重要

 後藤和浩さんは、昨今の中学入試の問題の傾向についてこう話す。

「中学入試は、今や単に知識を問うだけの無機質なものではありません。問題を見ると、その学校のポリシーや、先生方がどういう思いで作っているのかうかがえます」

 最近は単純な知識を問う問題が減り、その場で与えられた資料などから自分の意見を述べる問題が頻出しているという。

「社会科は暗記科目の印象が強いですが、たとえば2023年度入試の問題を見てみると、麻布(東京都港区)では、知識問題は解答記入箇所17のうち3題、栄光学園(神奈川県鎌倉市)は15のうち3題のみでした」

記述問題も思考力、表現力を問うものに

 記述問題も、単なる説明文の要約などではなく、意見を述べさせたり、相手の立場に立って異なる意見を書かせたりする内容が多くなっている。後藤さんがその一例としてあげたのが、清泉女学院(鎌倉市)のアカデミックポテンシャル入試の問題だ。総合型の入試で、考える力や表現力、異なる教科で学んだことを統合する力を測る。

清泉女学院(鎌倉市)の23年度アカデミックポテンシャル入試の問題を編集部で抜粋/同校提供

 図のような地図が示されたうえで、X町で、Y社が工場を建て、港も広げるため、アマモ(編集部注・海草の一種)生息地の海底を掘り下げる工事を予定していて、アマモを守るために計画に反対する環境保護団体が結成された––というもの。「この地域に工場ができれば、必ず発展し活性化する」というY社社長と、「沿岸部を掘り下げてしまったら、貴重な自然が破壊される」という環境保護団体のそれぞれの主張を、X町の税収の推移やアマモ近辺に生息する生物種類の数などの資料をもとに根拠を示しながら詳しく記述させる問題だ。

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柿崎明子
ライター 柿崎明子

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