大人はつい、「言われる前に動いてほしい!」と求めがちですが、まだまだ人生経験の浅い子どもたちは、実は時間の「感じ方」も大人とは異なります。そのしくみを理解すると、大人はもっとおおらかに「子ども時間」を見守ることができるはず。子どもが体感する「子どもの時間」と大人の体感する「大人時間」の違いについて、千葉大学人文科学研究院教授の一川誠先生に聞きました。「AERA with Kids 2023年秋号」(朝日新聞出版)からご紹介します。

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子どもは今、時間に「合わせる」練習中!

「ほら、早くしないと間に合わないよ」「あと5分だよ!」といくら言っても、子どもにはピンとこない様子。こんなとき、大人は「いつになったら、時間の感覚が身につくの?」とジリジリ……。「大人と子どもの時間感覚は別物です。そもそも、子どもはまだ『時間に合わせる』という生活に慣れていないのです」と話すのは、時間の認知について研究を行う一川誠先生です。

「時間の長さを自分で判断するということは、明確な情報がないのでとても難しいことです。それを、生活の中で自分の感覚に合わせて学習していかなくてはなりません。実はかなり高度なことですよね。個人差はありますが、一般的に『昨日、今日、明日』といった過去と未来の感覚がついてくるのが6歳くらいといわれます。小学校に入学すると『時間割』に出合い、今度は『時計の時間に合わせる』生活に慣れる練習が始まるのです」(一川先生)

 時計が読めるようになっても、それで「時間感覚」が身につくわけではないのです。

「まだ『時計の時間』を使い慣れていないので、イベント(体験)の数に従った長さの評価が主体になりがちなのです。時計を見なくても『そろそろ1時間くらい経ったかな?』という感覚が身につくようになるのは、9~10歳、人によってはもっと上の学年になることも。子どもの時間に対する感覚は、さまざまな体験を通して成長します。遅れたり約束の時間が守れなかったりしても、『今は、時間の感覚を覚える練習中なんだ』という観点で見守ってあげたいですね」

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AERA with Kids編集部
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