たくさん「体験」して時間感覚を鍛えよう
最近、「タイパ」や「倍速」といったことばをよく目にするようになり、時間をいかに効率よく使うかに注目が集まっています。
「自分がやりたいことをする時間をつくるために、能動的にタイパや倍速を意識してみることは悪くないことだと思います。『ゲームをしたいから、宿題を早く済ませちゃおう』なんて、子どもにもよく見られますね」(一川先生)
とはいえ、時間に合わせる「練習中」の子どもは、できるだけたくさんの体験をすることも大切と一川先生は続けます。
「いろいろなことを体験することが、時間の感覚をつかむ練習にもつながります。さらに、子ども時代はまだ体験が少ないので、何をするにも楽しかったり、新鮮だったりといった感覚を多く味わいますね。これらは、充実した『豊かな時間』として、その一つひとつが記憶に残ります。この記憶が多いほど、『自分はいろいろな体験をしている』と、子どもが自分を前向きに評価できるのです」
また、学校生活だけでなく、休みの日にどこかに出かけたり、なにかイベントに参加したり。特別な体験をすることも、子どもの時間感覚を養うのに効果的です。
時間の使い方は、どう生きるかにつながる
「子ども時代にルーティン化した生活を送ると、時間は守れるようにはなるかもしれませんが、記憶に残る体験が少なくなってしまうでしょう。それはちょっともったいないですよね。スマホやゲームは、動作もらくだし、インパクトが少なく記憶に残りにくいものです。退屈を取り除くことはできても、充実感は得にくいでしょう」
そして、子どもの時間は子どものもの。大人がその使い方に口を出しすぎることはNGです。
「時間をどう使うかは、どう生きるかということ。それを人に決められるのは、人に生き方を決められていることと同じことです。子どものうちから時間の感覚を養って、自分の時間を使いこなせる人になってほしいですね」
最後に、日常にワクワクがすっかり少なくなってしまった大人でも、「子ども時間」を体験できる方法を一川先生に聞きました。
「子どもと遊びに出かけることです。一緒に新しいことに触れられるので、子ども時間を疑似体験できますよ!」
(取材・文/AERA with Kids編集部)
※「AERA with Kids2023年秋号」から抜粋
朝日新聞出版