「子曰わく、甚(はなはだ)しいかな、吾(わ)が衰えたるや。久しいかな、吾(わ)れ復(ま)た夢に周公を見ず」(述而第七)
孔子も、晩年「私も、ずいぶん年をとって衰えてしまったなぁ」と嘆いています。孔子が嘆くのは、「周公旦」という、理想とし、仰ぎ慕っていた聖人の夢を見なくなったからなのですが、相談者にとって理想の人は誰かいらっしゃいますか?もしあれば、「その理想の人だったら、今、どう考えるか、どう行動するか」と考えてみませんか。
「父親としてどのような心持ちでいるべきか」ということは、自分がどのように生きるかということと無関係ではありません。
第三者的に自分を見つめ、また、そうした訓練を積むことで、娘さんを「迎えに行きたくなくなってしまう」などという否定的な気持ちは容易に消してしまうことができるようになるのではないでしょうか。
われわれは今、時代の転換点にいます。「今」だけを考える「インスタント式の思考」から、後世に何を残すか、遺せるかという深い思考が必要な時代に生きているのです。自分を磨くこと、そして深くて広く、常に若々しく柔軟な思考ができるようにすること、そのためには何をすべきか、ということを考えてみられるといいのではないかと思います。内面の「若さ」は、外見にも表れるのです。
【まとめ】
昔から人は他人の欠点ばかりに目がいきがち。指摘は気にせずに、「自分が理想の人ならどう生きるか」、第三者的に自分を見つめよう
山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『ステップアップ 0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。母親向けの論語講座も。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。