すると今度は、大人の言葉をうのみにせず、おかしいと思ったら反論する場面も。これも「生意気だ」などと思われてしまうのです。
「自分の力不足を実感したり、葛藤と闘ったりするのは、順調に脳と心が育っている証拠です。これを理解できれば、大人ももっと穏やかになれますよね」
プレ思春期の子どもたちへの対応について、本田先生は、いちばん大切なことは「大人が子どもの葛藤や試行錯誤を邪魔しないこと」と話します。
「なぜなら、子どもたちは葛藤の中で、“こうしたらどうだろう”とさまざまな試行錯誤をして、状況を理解する力や先を見通す力をつけ、自分なりの対処の法則を見つけていくからです」
例えば子ども部屋が暑いとき、大人が気をきかせて冷房をつけてあげたのでは、自分で対処する経験ができません。暑さに気がついたら、子どもは上着を脱いだり冷房をつけたり、冷房の温度を調節したりと、快適に感じる解決策を自分で探すでしょう。
「子どもの年齢によって、親の役割は変わります。本格的な思春期に入ったら、いよいよ親は子どもの後ろを歩き、転んでも手を出しません。でも、振り向いたら親はそこで見守っている。こうした関わりを通して、子どもは自分の足で歩いていけるようになります。でもそうなるためには、小学生の今、葛藤や試行錯誤の経験を重ねておくことが必要なのです」
※「AERA with Kids 2022年秋号」(朝日新聞出版)から一部抜粋
(取材・文:松田慶子)
AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2022年 秋号 [雑誌]
朝日新聞出版
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