■目標がないままの受験はナンセンス

安浪 このような質問が来た時は、家族の会話を大事にしてください、興味のあるものは徹底的に掘り込む体験をさせてあげてください、とお話しするのですが、こういう質問をされる方は具体的なテキストやドリルの情報がほしいんですよね。もちろん、「こういうドリルをやってみたらどうですか?」ということはいくらでも言えますが、それは本質的ではないな、と思ってしまうんです。

矢萩 その子が持っている基盤と目標が揃って初めて、中学受験って解像度が高い話ができるんです。基盤や目標がないまま、受験の話から始めるって、結構ナンセンスだと思うし、答えにくいです。

安浪 これって、とりあえず起業したいです、だけど自分に何がやれるかわかりません、と言っているようなものかな、と。

矢萩 それは面白いたとえですね。登記するのに一生懸命でそれで終わってしまう、という。起業するのがかっこいいから、という理由で起業する人もいますが、自分のできることでなければ成り立たないし、社会のためになっていなければ存続することは難しい。受験も、受験自体が目的になってしまうと、偏差値で選んだり学校名のブランドで選んだりと、本質からかけ離れてしまいます。時間も手間もかかるかもしれないですが、自分の価値観や、現状のレベル感に合った学び方を探してほしいですね。

(構成/教育エディター・江口祐子)

【質問募集中】お二人に相談したい中学受験のお悩み、こちらからお寄せください↓
https://dot.asahi.com/info/2021120800052.html

著者 開く閉じる
安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

1 2 3 4