「走る哲学者」とも呼ばれている為末大さん。小さいころから本好きだったそうですが、読書体験はアスリートとして能力を発揮するためにも役立ったといいます。「AERA with Kids春号」(朝日新聞出版刊)では為末さんに、読書がもたらしてくれる力や小学生におすすめの本を教えてもらいました。

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 子どものころから活字を読み、見知らぬ外国に冒険に行ったり、絶対にできない非日常を体験したり……言葉からイメージを膨らませるのが好きでしたね。

 小学校時代は地域の陸上クラブに所属しつつ、学校では読書部に入っていました。読書が好きで内向的で、たまたま身体能力が高かったという感じ(笑)。国語の教科書は、年度頭に受け取ってから、新学期に授業が始まるまでに読み終わっていました。

 幼少期に本を通してたくさんの言葉に触れたことは、競技生活にも役立ったと思います。というのも、長く競技生活を続ける上で一番重要なのは、メンタルを平常に保つということ。イライラ、モヤモヤ、なぜかやる気が出ないというとき、その感情を整理して言語化すると、自分の心を客観視できます。そうやって自分の状況を冷静に判断できれば、心のバランスを保つことができますからね。

 また選手を指導するときにも、今、目の前で起きている状況、例えば「なぜうまく行かないのか?」などを言語化して頭の中で整理することは非常に重要です。そうすれば、冷静な判断もできますし、指導者がイライラして感情爆発するようなことを避けられるのではないでしょうか。

 5歳の息子にも小さいうちからいろんな言葉にふれてほしいと、夫婦交替で毎晩読み聞かせをしています。体力が有り余っていて、なかなか寝てくれないので、毎晩5、6冊は読みます。息子に読み聞かせをしていると、「それはどういうこと?」と、頻繁に言葉の意味を聞かれます。何とか答えても、「その言葉の意味も分からない」と言われてしまうことも(苦笑)。本当に言葉というのは奥深いですね。日々こちらの言語能力が試され、磨かれている気がします。

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阿部桃子
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