「ジャンプがあるのだから、そこまで勉強しなくてもいいのでは?」と言われることもあるのですが、やはり学校で教えてもらうことは大事だと思います。それに、競技を終えた後の人生のほうが、普通は長いわけです。社会に出たときに、何もわからないでは通用しません。大学に進学したのも、そういった気持ちがあったからです。
実は10代のころから、引退後の生活について考えています(笑)。やめた後、自分が今までやってきたことをどう生かすか。せっかくこれまでスポーツをしてきたのですから、それを子どもたちのために役立てたい。女子スキージャンプという競技を浸透させるためのバックアップをしていきたいと思います。
最初は遊びの延長だったジャンプですが、女子ジャンプを牽引してきた先輩方をテレビで見てから、「自分もこんなかっこいい女性になりたい!」と思うようになりました。結果を意識しだしたのはそれからです。ですから、私の姿を見て、「スキージャンプをやりたい!」と思ってくれる子どもたちが増えたらうれしいです。女子ジャンプを盛り上げてくれる新しい選手の誕生につながるようなパフォーマンスを私自身がし続けることも、目標の一つです。
2018年からジャンプの作り直しに入りました。今までのスタイルを意識せず、ゼロから組み立て直したのですが、これは自分が予想していた以上に難しいことでした。感覚的な部分も多いスポーツなので、私自身の中にあるリズムがかなり大きく関わってきます。自分で考えていることと、体がなかなかうまく噛み合わず、昨季は結果的には悔しいシーズンとなりました。
ジャンプの作り直しに踏み出したきっかけは、やはり18年のオリンピックです。そのままスタイルを変えずに続けていたら、それなりの成績は残せたかもしれません。でもこのままでは、トップを引っ張っていくことはできません。またトップに戻って、女子ジャンプ界を新しい技術で引っ張っていきたいという強い思いがあるのです。
不安はもちろんあります。でも、やるしかない。どんなに苦しくても、目の前のことをつなげていくことで、先の目標や遠い大きな夢につながっていくと考えています。これだけ頑張れるのは、なりたい自分の姿を明確に持っているからです。それはすごく大きい。いつもそこに向かって進んでいるのです。(取材・文/黒坂真由子)
高濱正伸,安浪京子