西條:でも中学生のときバブルがはじけ、同時に環境保護の流れと、そもそもハンターがいなくなり、家業はなかなか厳しくなりました。今年はどう?と父に聞くと、「去年の半分だな」って。それが毎年(笑)。

高濱:豪快でいいですね。おかあさんはどんな方でしたか。

西條:太陽みたいでやさしかったです。家の教育方針も、人さまに迷惑かけなかったら何をやってもいいという感じでした。ビンボーだから国立しか行かせられないぞと言われたけど、2浪して学費は自分で稼ぐからと早稲田に入りました。私はテニスがしたくて入った高校で、入学時は首席だったんですよ。でもあっという間に300番台まで転げ落ちました。

高濱:わかるわかる。関心のあることには夢中になるけど、そうでないことはできないんでしょ。

西條 まさにそうでした。でも両親は僕の関心を尊重してくれて、何になれとかそういうことは一切言われなかったので、そこはありがたかったですね。

高濱:おかあさん方を見ていて思うのは、つい子どものために一生懸命やってしまうんです。でも子どもに本当に必要なのは、そのおかあさんの期待をはねのけて、自分の哲学を持つことだから。

西條:親の関心と子どもの関心を取り違えちゃうんですよね。子どもの関心を尊重するのではなく、“あなたのためよ”と親の関心を押しつけちゃう。私は、一人ひとりの関心を大切にすることが、子育てや教育の本質だと思っています。

高濱:子どもの関心を尊重するために何か具体的なアドバイスはありますか。

西條:物心がついたら、子ども自身が自分の関心に沿って思い通りに育っていくことをサポートしていく方向に舵を切ったほうがいいと思います。子どもを信じて、子どもの関心に対して「肯定ファースト」にしようと腹をくくることじゃないでしょうか。

高濱:おかあさんは、家庭をマネジメントする要の存在です。ぜひ肯定ファーストの本質を腹に据えて、ドンとかまえて子育てをしてほしいですね。

(構成・文/篠原麻子)

■西條剛央(さいじょう・たけお)/1974年仙台市生まれ。早稲田大学人間科学部卒、同大学院で博士号。早稲田大学大学院で教鞭を執る傍ら、東日本大震災後の2011年4月「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げ、日本最大級の総合支援プロジェクトに成長させた。「本質行動学アカデメイア」の代表として「エッセンシャル・マネジメント・スクール」も主宰。

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篠原麻子
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