「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は将来の中学受験のあり方について悩むお母さんからのご質問です。
【ランキング】偏差値50台で入れて国公立大に強い首都圏の中高一貫校* * *
安浪:かつて中学受験といえば「一生懸命に勉強をして少しでも偏差値が上の学校を目指す」が主流でした。でも今は、中学受験そのものに対する価値観が多様化し、従来通り最難関校・難関校を目指すことがゴールのご家庭もあれば、環境の整った私立であればどこでも良いというご家庭、志望校はないけれど無理しない程度に勉強は続けて御縁のあった学校に進学できればOK、というご家庭もあります。親がつきっきりで大量に勉強をやらせているご家庭もあれば、ほとんど親は関わっていないご家庭もあります。だから「どちらがいいか?」と聞かれても、各ご家庭の価値観次第なので、どちらがいいとは私には言えません。
矢萩:そうですね。まずはご家庭の「価値観」とご本人の「性格や性質」を確認することが大事ですね。その際、保護者が学生だった頃とは、時代が大きく変わりつつあることも考慮する必要があります。
安浪:今年高校に合格した元教え子は、すべて子どもに任せるというスタンスで、中学受験時代、親御さんはほぼ関与していませんでした。週末の午前中に指導に伺っていたのですが、いつも「今週もずっと遊んでいて、今朝も5時に起きて1週間分の宿題を慌ててやっていました」と耳打ちされていました。中学入試では御縁がなく公立中学に進学し、中学1、2年生の間も親御さんから「相変わらず勉強は直前詰め込み派です」とご連絡をいただいていたのですが、3年生になって本気を出し、最難関高校に合格しました。親が口を出すのは簡単ですが、家庭教師や塾といった環境だけは整え、本人が自覚を持つのを辛抱強く待つというのはなかなかできることではないな、と思いました。
次のページへ「いきなり座学」は、幸せな学びにならない