2013年のデビュー作品『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)以来、子どもの目線でユニークかつ、哲学的な発想でさまざまなテーマを描く絵本作家、ヨシタケシンスケさん。最新刊の『ぼくはいったい どこにいるんだ』(同)では、頭の中や心の整理術として、絵や文字で「かいてみる」ことをすすめます。絵本作家として10年という節目の年、新刊にこめた思いやヨシタケさんの描く絵本づくりの「ルール」を聞きました。
* * *
■大人でも子どもでも「一生つきまとうであろう悩み」をテーマに
デビュー作の『りんごかもしれない』は、固定観念を疑ってみることをテーマにしました。『このあと どうしちゃおう』(同)では、人間って死んだあとはどうなるの?といった死生観について考えています。
『ころべばいいのに』(同)では、自分が「嫌いだ、苦手だ」と思う人への対処法を描いたのですが、これは僕の実生活がモチーフになっています。誰でも、苦手な人っていますよね。それに対して「そんなの、気にしなければいいんだよ」と言う人もいますが、気にしなくて済むなら、この本は描きませんでした(笑)。「それができないから困ってるんじゃないか!」という、楽観的な人に対するいら立ちもこめています。
本のテーマを選ぶとき、僕は「そのテーマが、子どもにとっても大人にとっても切実な問題であるかどうか」ということをとても大切にしています。ですから、僕の本は子どもから大人まで、幅広く読んでいただけているのかもしれません。人間関係だったり、自分の理想と現実との乖離だったり、子どもも大人も実は悩みごとってあまり変わりませんよね。
人間には、要領のいいタイプとそうでないタイプとあります。僕は、要領のいい人間を後ろから見て、「憎たらしい」と思うタイプ(笑)。「もっと要領よくやったら?」なんて言われても、「そう言われてもねえ」と「悔しさ」からは逃れられないわけです。
次のページへ「人間って、やっぱり不公平だよね」