そこで、せめてその要領の悪さを面白がれるような状態はつくれないかと。「人間って、やっぱり不公平だよね」「夢って、かなわないこともあるんだよ」といった、学校の先生や親が子どもに言いにくいことを言える場はないかなと……。
そんな身もふたもないことを面白おかしく言える、まさに客観視できるのが絵本なのです。子ども時代、僕はどちらかというと内気な少年で、親に反抗もできませんでした。当時の僕が、こんな本に出合っていたらどんなに救われたことか。
そんな思いがあるので、僕の本は「大人が言いそうなこと」からはできるだけ距離をとっているのです。僕の子どもたちは小学6年生と高校生。思春期に入り、反抗期にも突入しています。自分が親だからよけいにそう思うのかもしれません。ですから、ブラックな部分を感じて皆さんに喜んでいただけるのであれば、こんなにうれしいことはありません。
大切なところに行きつく前に、細々としたものがたくさん転がっていて、僕はそれにつまずいてしまうんです。でもそれが日常、人生なのです。「いちいち細かいことに足をとられるんだよね」という日常を、どうにか楽しんで面白がれる方法……これからもそういうテーマを追求して、描いていきたいですね。
■かき出してみると、わかることや整理できることがたくさんある
新刊の『ぼくはいったい どこにいるんだ』は、頭の中でモヤモヤしていることを、一度紙に「かき出してみる」ことをテーマにしました。
絵や文字で紙にかき出すのは、僕自身が日常いつもやっていることです。思ったことを「つまり、それってこういうことじゃない?」とかき出してみると、物事を俯瞰して客観視できますよね。すると、「なんだ、頭の中でモヤモヤ悩んでいたことって、かき出してみると結局この3つか」と物事が整理できたり「目的に向かって、今自分はここにいるんだな」と現在地が確認できたりします。紙にかくことで便利になったり、快適になったりすることはたくさんあるのです。ですから、大人も子どもも「ぜひ、やってみようじゃないか!」……そんな気持ちで描きました。
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