■低農薬栽培に応用できるかも
東京理科大学の有村源一郎准教授たちがミントの周囲にダイズやコマツナを植えて防虫効果や防虫のしくみを調べたところ、次のようなことがわかった。
「ミントのなかでも、キャンディーミントとペパーミントが近くにあると、ダイズもコマツナも、害虫に食われる割合が半分ぐらいに減りました。そのわけを調べてみると、ダイズやコマツナはミントの香りをキャッチすると、自分が害虫に食われたときと同じように『害虫が食べに来た』と思いこんで、害虫がおなかをこわすようなたんぱく質をたくさんつくっていたのです」
この現象は、ミントが周囲の植物に「害虫が来ている! キミたちも防御物質をつくったほうがいいよ」と知らせているようなものだ。ミントはこれによって自分がトクをするわけでも、ダイズやコマツナからお礼のプレゼントをもらうわけでもない。厳しい生存競争のなかで生きる植物にしては、お人よしすぎるように思うが、有村さんの説明はこうだ。
「植物には片方だけがトクをするような関係も多いのです。この場合のダイズとコマツナのように、ほかの植物の『おしゃべり』を一方的にキャッチして利用することを、科学の専門用語で『立ち聞き』(英語でeavesdrop)といいます。立ち聞きは、ほかの多くの植物もやっていて、香りをキャッチすると、自分が害虫に食われたときと同じように反応して身を守ります」
植物が「おしゃべり」だけでなく「立ち聞き」もしているなんて、人間みたいで親しみを感じてしまうね。将来、ミントの香りを使って低農薬野菜の栽培ができるようになるかもしれないそうだよ。植物を育てている人は、ミントの鉢やプランターをそばに置いて、どのぐらい効果があるか確かめてみよう。(文/上浪春海)
※月刊ジュニアエラ 2019年1月号より

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