東京大合格高校上位校である麻布、筑波大学附属駒場、灘には、事実上、明文化された校則がないといっていい。
灘中学高校の和田孫博校長は、同校ウェブサイトで次のように言う。
「本校の生徒たちは自由を謳歌しています。ただ、本校に存在する自由というのは放縦とは異なり、自律心を伴わなければ許されないものです。服装や髪型も自由ですが、中学生・高校生にふさわしいものでなければなりません」
麻布中学高校の平秀明校長はこう説いている。
「校則というのは、何々をしてはいけないという『拘束』だと思っています。仮に、校則によって中高時代がコントロールされても、卒業したらタガが外れて、自分を律することができなくなるのではないかという懸念があります」
「私は教育現場で統制を強めることはいいことじゃないと思っています。国の考えを注入する機関でもありません。一人の人間としてしっかり確立させるというのが教育の大前提です」(いずれも「弁護士ドットコムNEWS」2018年2月12日)
さすが、前川喜平・元文部科学省事務次官の母校だけのことはある。
麻布の校則について、同校OBの教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏が解説する。
「校則のかわりに、麻布の不文律というものがあります。一つめが鉄下駄禁止。そういう漫画が流行ったときに、鉄下駄を履いてくる奴がいて、床がボロボロになったからです。二つめが麻雀禁止。お金をかけると人間関係がおかしくなるから。昔はお金をかけなければOKでした。三つめは授業中の出前禁止。授業中にラーメンの出前が届き、『そんなもんが授業中にあったらみんな食べたくなっちゃうだろ』と先生が怒鳴って、結局『俺が食べる!』と言って、教卓で食べてしまったという逸話が残っています」
最近はこれに「全裸での外出禁止が加わったようだ」(おおた氏)。近所のコンビニで全裸になった生徒が麻布署に連れて行かれた事件があったからだとか。なかば都市伝説のような話に聞こえるが、おおた氏は「あの学校ならば、ありえる話」だと言う。
校則がない、あるいは、校則が厳しくない学校は、東京大など難関大学合格に実績がある進学校に見られる。生徒の自主性を信頼してのことだろう。
それを象徴するように、東京大合格実績がある高校には制服がないところも多い。2018年の東京大合格高校ランキングトップ5の6校(5位が2校あるため)のうち、私服で通学できる学校は半分ある。□筑波大学附属駒場(109)、◎麻布(98)、◎灘(91)の3校だ。(◎は私立、□は国立、無印は公立。カッコ内は合格者数、以下同)。
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