少子化対策というと主に女性向けの支援が多いが、家事・育児は別に女性だけの役割ではない。男性の働き方や意識を変えることこそ重要だ。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。
【図】アンケート結果/「男性の家事育児時間が増えれば少子化は改善する?」
* * *
出産可能な世代の人口減少に加え、非婚化と晩婚化、さらに「産み控え」も重なって、急速に進む少子化。合計特殊出生率は1.30(21年)まで落ち込み、明るいニュースが乏しい中、21年度に、「社内出生率1.97」となった会社がある。伊藤忠商事(東京都港区)だ。
■全ての社員に意義ある
同社では13年10月、朝型勤務制度を導入。午前8時までに出社した社員にはパンやおにぎり、バナナなどの軽食が無料(ひとり三つまで)で提供されることもあり、その時間までに約6割の社員が出社している。また、午後8時以降の勤務は原則禁止されているため、限られた時間の中で社員が高い集中力を発揮できているという。同社人事総務部の担当者はこう話す。
「働き方の変化が、効率化につながり、さらに家族と過ごす時間が増え、夜型の長時間労働を当たり前としない社内風土が醸成された。その結果が、社内出生率の上昇につながった」
朝型勤務が導入される直前の春に入社した同社の能登隆太さん(32)は、
「入社当時は夜が遅いのが当たり前で、業務の後は頻繁に会食や飲み会が入っていました。参加することが暗黙の前提のような雰囲気があった」
と振り返る。
だが、この日は午前8時からの会議に参加するために午前7時30分に出社。朝型軽食の配布会場でパンを手にすると、オフィスへ向かった。夕方は3歳の息子のお迎えに行くため、早めに退社する予定という。そうした姿は社内で珍しいことではなく、とがめる人は皆無だ。
「育児と仕事が両立しやすくなったと思います」(能登さん)
人事総務部の担当者は言う。
「ここまで来るのに、10年かかりました。一連の働き方改革は男女を問わず全ての社員にとって意義のある制度だったので、ここまでの成果が出たと思います」