AERA 2023年3月6日号より
AERA 2023年3月6日号より

「現役中、肩にのしかかったのは自分との戦い、相手との戦いに加え、車いすテニスがスポーツとして認知されたいというこだわりでした。東京パラを通じて、その土台ができた。僕があと10歳若かったら、ここから頑張りますよ。人気競技に発展させるために。でも、もう40歳手前になったというのが心残りかもしれない。エネルギーが尽きた、という感じですかね」

■期待する2人の後輩

 幸い、後に続く後輩がいる。先の全豪オープンの男子シングルスで準優勝した16歳の小田凱人と、全豪の女子シングルスで準優勝した28歳の上地結衣だ。小田には引退を決めた翌日、電話で「後は任せた」と託した。上地にはトレーニングセンターで直接、引退を伝えた。

「4大大会に出ていた日本人は僕と結衣ちゃんの2人だった期間が長かった。結衣ちゃんに負けられない、対抗したい気持ちもありました」

 だから、新たな切磋琢磨(せっさたくま)の関係を2人に託す。それを支えるための環境作りに力を尽くす。

(朝日新聞編集委員・稲垣康介)

AERA 2023年3月6日号より抜粋