広域連続強盗事件。フィリピンから移送された今村磨人容疑者(写真右)と藤田聖也容疑者(写真/アフロ)
広域連続強盗事件。フィリピンから移送された今村磨人容疑者(写真右)と藤田聖也容疑者(写真/アフロ)

――どんなことをしたんですか。

 自分を含めて、4人で動いていました。僕は電話をかける役で、後は金銭の受け取りをする「受け子」を取りまとめるリーダー、不動産の調達担当、そしてインフラ面を整える役割を担う人がいました。

――罪悪感はありましたか。

 電話でアポを取っているときは、不思議と罪悪感はありませんでした。ただ、相手がお金を受け子に渡す瞬間には「やってしまった」という気持ちが湧き上がってきました。変な高揚感というか、罪悪感がゾワッと押し寄せてくる。

――やめようとは思わなかった。

 その罪悪感も受け子が逃げ切ったことがわかると、なくなってしまうんです。振り幅がすごいというか。罪悪感を抱いたときには、「悪いことをしているわけではない」「自分の将来や家族のために必要なんだ」と自分に言い聞かせていました。今思えばとても利己的でした。

――現在問題になっている広域強盗事件では、指示役がフィリピンから遠隔で指示をしていたといわれています。フナイムさんは受け子と面識はありましたか。

 受け子のリーダーが取りまとめていたので、僕は直接会ったことはありません。電話で声を聞く限り、30~40代くらいかなという印象でした。

「やっと終わったな」

――その後はどうなりましたか。

 高齢者から保証金をだまし取ったとして、2015年に逮捕されました。ガサ入れの前日、販売マニュアルをくれた人から「かけ子(電話をかける)グループと連絡が取れなくなっていて、たぶん捕まりました」「そっちもやばいから片づけたほうがいい」と電話がありました。それで、急いで他の3人を招集しました。でも、受け子のリーダーが「お金を持っていこうとしているんじゃないか」と勘ぐり始め、その日は帰ることになりました。

 翌朝、事務所でパソコンや資料を処分していたら、急に外が騒がしくなった。ルーフバルコニーや事務所の入り口ですごい足音がして、数十人の警察官に取り囲まれました。朝11時くらいだったと思います。受け子のリーダーともう一人は、事務所近くまできていたそうですが、様子がおかしいと思って逃げたそうです。彼らは2カ月後に自首したと聞いています。捕まってからは会っていません。

――逮捕されたとき、どう思いましたか。

「やっと終わったな」という安堵感がありました。ただ、すぐに恐怖心が湧いてきました。

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「子どもの七五三には行けないな」