やりたいと思ったら徹底的にのめり込むというマーカス加藤絵理香(photo 写真映像部・加藤夏子)
やりたいと思ったら徹底的にのめり込むというマーカス加藤絵理香(photo 写真映像部・加藤夏子)

 ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。

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 短期集中連載の第4回は、マーカス加藤絵理香さん(46)だ。男性が幅をきかせる日本企業において、女性のキャリア形成は容易ではない。彼女はソニーで、それを地球規模で成し遂げた。2022年12月12日号の記事を紹介する。(前後編の前編)

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「エリカって呼んでください。みんな、そう呼んでいます」

 こう語るのは、2020年4月設立の新会社ソニーAIでストラテジー&パートナーシップ担当のディレクターとして戦略領域などを統括する、マーカス加藤絵理香(46)だ。

 名字のうち、マーカスはアメリカ人の父親、加藤は母親の姓だ。日本の小学校を卒業後、中高はインターナショナルスクールに進み、アメリカでマーケティングと哲学を学んだ後、1998年4月にソニーに入社した。多様性を体現している。

「いわゆる日本企業然とした会社は合わないと思った」というエリカは、グローバル企業のソニーグループで、はつらつと元気に駆けまわる。

■徹底したこだわり派

 ソニーAIは「人類の想像力と創造性を解き放つAIの創出」をミッションに、最先端のAIの研究開発を行っているが、その中の「新規探索領域」の一つとして「食」がある。環境問題や健康などの視点からも注目される領域だ。なぜ、エレクトロニクスから始まったソニーが食を追うのか。

「食はエンタテインメントです。エンタの会社であるソニーにとって無視できない領域の一つ。ソニーのDNAともマッチするものがある」

 と、彼女はいう。

 目指すのは二つ。一つは調理支援ロボット、もう一つはレシピ創作支援AIアプリの開発である。前者は、食材の下準備から盛り付けなどの全工程でシェフをサポートするロボット。後者は、味、香り、風味、分子構造などの情報をデータベース化、解析し、AIで新たな食材のペアリングやレシピの創作を支援するツールの作成だ。

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