ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。
【写真】ウェブ上の仮想空間に構築された「エティハド・スタジアム」
短期集中連載の第3回は、小松正茂さん(49)。柔軟な発想と行動力を併せ持つプロジェクトリーダーだ。ソニーの再生の原点を探ると多くの新規事業、そして、背景にある法則がみえてくる。2022年12月5日号の記事を紹介する。(前後編の前編)
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ソニー再生の“原点”は、目白押しの新規事業にある。
それも、組織単位ではなく、プロジェクト単位の取り組みである。プロジェクトは「集団」ではなくて、「個」の集まりだ。
仕事は組織でするのではなく、「人」がするものというのが、「ソニーの法則」である。
ここに、名の知れたプロジェクトリーダーがいる。
「始めるのは上手だけど、まだ儲けてないよねといわれていますよ」と苦笑する達人こと事業開発プラットフォーム新規事業探索部門コーポレートプロジェクト推進部統括部長の小松正茂(49)だ。
彼がいま、精力的に取り組んでいるのは、スポーツエンタテインメントビジネスの創造だ。彼は、同部門のスポーツエンタテインメント推進準備室統括部長でもある。
■15兆円の巨大市場
ご存じのように、スポーツイベントは、新型コロナウイルスの影響により、国内外ともに壊滅的な打撃を受けた。密集を避けるため、観戦は中止または入場制限が行われた。チケット収入は激減し、物販も減る一方だった。
しかしながら、ピンチはチャンスである。試算によると、日本におけるスポーツビジネスの市場規模は、2025年には15兆円になると予想されている。スポーツは今日、エンタテインメントの代表的な存在である。
ソニーは、ハードの先端技術はもとより、音楽や映画、ゲームの分野でソフト技術を磨いてきた。それを活かせば、新たなスポーツエンタテインメントを創造できる。
ソニーは20年10月、Jリーグの横浜F・マリノスと「テクノロジー&エンタテインメント分野でパートナーシップに向けた意向確認書」を結んだ。それは思わぬビジネスへと進展する。