オーストラリア第3の都市ブリスベンの中心部を流れるブリスベン川沿いの遊歩道を歩く人々。屋外はおろか屋内でもマスクをしている人々はほとんどいない(2022年6月/撮影・柳沢大河)
オーストラリア第3の都市ブリスベンの中心部を流れるブリスベン川沿いの遊歩道を歩く人々。屋外はおろか屋内でもマスクをしている人々はほとんどいない(2022年6月/撮影・柳沢大河)

 まだまだ続くコロナ禍だが、海外では旅行や経済活動など「コロナ前」の状況にもどりつつある。「そろそろコロナによるパニックも終焉か」というムードも広がっている。一方、コロナの間に鳴りを潜めていた他の感染症が流行の兆しを見せている。今回は一足先に冬を迎えた南半球オーストラリアのインフルエンザと、日本と同じ島国ながら様々な感染症が広がりを見せそうなイギリスの様子をレポートしたい。

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オーストラリアでは、大流行に先手を打った
インフルワクチン無料接種が奏功か

 この2年半のコロナ禍でソーシャルディスタンスが保たれ、マスクの着用が義務付けられていた時期があったことも影響してか、すっかり鳴りを潜めていたインフルエンザ。オーストラリアでは、2020年は検査による確定例が2万1266人で死者が37人、21年に至っては感染者数はわずか598人で死者はゼロ。コロナ前の19年は感染者数が約31万人と異常に流行した年だが、その前の5年間平均値約11万人と比べても極端に少なかった。

 ところが南半球が秋に入った3月からオーストラリアでは流行の兆しが見えてきた。冬に入ったばかりの6月19日時点での今年ののべ感染者数は14万7155人と、すでに上記の5年間平均値を超えている。

 現在オーストラリア全体で1日あたり2万4000人ほどのコロナの新規感染者が報告されているのに対し、インフルエンザは4000人ほど。コロナと比べて数字的にはまだ少なく見える。ただしこれは病理検査に正式に出されて判明している数。熱などの症状は出てもコロナのRAT(抗原検査)で陰性だったので医者などにかからず静養しただけの人も多いと考えられ、報告されていないケースが相当数あると思われる。また上記の1日4000人の数字は6月19日までの2週間の平均値で、それまでの2カ月超の総感染者が約9万人だったことから、明らかな増加傾向が見られる。ちなみに病理検査で判明したうちのほとんどがインフルエンザA型だ。

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5カ月後に北半球では?