激戦を制して第20代韓国大統領に選出された尹錫悦氏(右)が支援者を前にあいさつした/3月10日、ソウル(photo:gettyimages)
激戦を制して第20代韓国大統領に選出された尹錫悦氏(右)が支援者を前にあいさつした/3月10日、ソウル(photo:gettyimages)

 次期韓国大統領に尹錫悦氏が激戦を制して選出された。過去最悪とも評される日韓関係は改善するのか。AERA 2022年3月21日号は、元駐日韓国大使の2人に見通しを聞いた。

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 韓国大統領選が9日、投開票され、最大野党「国民の力」と中道系野党「国民の党」が推す尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長(61)が、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿(キョンギ)道知事(57)らを破った。尹氏は5月10日、第20代大統領に就任する。尹氏と岸田文雄首相は3月10日、それぞれの記者団に、日韓関係の改善に取り組む考えを示した。両首脳は最悪の状態に陥った日韓関係を立て直すことができるのか。かつて駐日韓国大使を務めた申ガク秀(シン・ガクス、大使在任期間2011年6月~13年5月)、李俊揆(イ・ジュンギュ、同16年7月~17年10月)の両氏は、両首脳の信頼関係が何よりも重要だと語った。

 両氏は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の5年間を「1965年の国交正常化以来、最悪の関係に陥った」と口をそろえる。申氏が「原因が複雑な多層複合骨折状態。対立が政治分野から経済や安保などに広がり、ほとんど全方位的に断層ができた」と語れば、李氏も「両国間で虚心坦懐(たんかい)に対話できるパイプがなくなり、関係改善に努力するエネルギーそのものが失われてしまった」と語る。

■小さな政府構想訴える

 実際、昨年着任した姜昌一(カン・チャンイル)大使は依然、首相にも外相にも面会できていない。日本政府関係者は「会っても前向きな話ができない。逆に世論を刺激するだけだ」と語る。李氏は、18年5月に東京で開かれた日中韓首脳会議と昨年7月の東京夏季五輪開会式が忘れられないという。「文大統領は18年5月、韓国大統領として6年5カ月ぶりに訪日したのに、日帰りだった。東京五輪開会式には来なかった。冷淡な韓日関係を雄弁に物語る出来事だった」という。

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