李在明・前京畿道知事(左)と尹錫悦・前検事総長
李在明・前京畿道知事(左)と尹錫悦・前検事総長

 3月9日に実施される韓国大統領選。有力2陣営とも日韓関係の改善が必要だと指摘する。だが、米中対立の激化や北朝鮮の対応次第では思うようにならない可能性がある。AERA 2022年2月28日号から。

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 韓国の大統領選が3月9日に投開票される。韓国の有権者の関心は、新型コロナウイルスの問題と経済の停滞、不動産価格の高騰に集中している。語られることが少ない外交と安全保障、特に日韓関係はどうなっていくのだろうか。有力2陣営の、外交安保ブレーンにインタビューしてみると、韓国の置かれた苦しい状況が浮き彫りになった。

 韓国の世論調査会社、リアルメーターが2月13日に発表した調査結果によれば、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が支持率41.6%でトップで、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の39.1%をややリード。7.7%で支持率第3位の安哲秀(アン・チョルス)候補は同日、尹氏に候補の統一化を呼びかけた。

■現政権の後継者を否定

 韓国大統領府の元高官は「新型コロナ、雇用、不動産、北朝鮮ミサイルなどで、国民にストレスがたまっている。世論が政権交代を望む流れに傾きかけている」と語る。ソウルの外交筋も「経済や不動産対策は、どの陣営の政策も五十歩百歩。韓国を取り巻く厳しい状況が、野党陣営への追い風になっているようだ」と分析する。

 野党への風を感じさせたのが、2月3日夜に開かれた、主要4候補によるテレビ討論会だった。李氏は、他候補から「文在寅(ムン・ジェイン)政権の後継者か」と問われ、「後継者ではない」と否定した。外交筋は「支持が伸びない焦りが強くなっている証拠。韓国を取り巻く状況は、文政権にとって都合の悪い状況ばかりだから」と話す。

 新型コロナの1日あたりの感染者数は最近、過去最多を更新し続け、2月17日発表では、2日連続で9万人を上回った。文政権が昨年11月から始めた社会規制の段階的緩和政策(ウィズコロナ)も、途中で足踏みが続いている。進歩支持者が多いとされる自営業者の不満も広がっている。文政権が「朝鮮半島に平和が来た」と自画自賛した南北政策も、北朝鮮が1月に7回ミサイルを発射したことで、完全に息の根を止められた。

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