
時代とともに価値観をアップデートし、世の中を牽引する人たちは、何を大事にしているのか。アエラは今回、社会に新たな視点を提供してきた4人に、それぞれの思考やこだわり、価値観を変える人を教えてもらった。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号は「価値観を変える」特集
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作家の乙武洋匡さん(45)は変えるためには「巻き込み力」が必要だと考えている。
「変えたい人もそうでない人もいる。その中でなぜ変える必要があるのかをわかりやすい言葉で誠実に説明し、少しずつ仲間を増やしていくことが必要です」
何かを変えようと動けば必ず変化を嫌う人から批判を浴びる。
「そうしたときにこそ、批判にひるむのではなく、『自分の声がより多くの人に届くようになった』と前向きにとらえ、手応えに変換するようにしています」
■俯瞰する視点を持つ
組織改革を進める企業を支援するエール取締役の篠田真貴子さん(53)は、いま「変化を生む人」とは、声高に変われと言う人ではなく、「異なる価値観に触れさせて刺激する人」だという。明確なスタンスと柔軟性を併せ持つ。そんな姿勢に触発されて、周りも自然と変わるようなロールモデルが変化を牽引する。篠田さんが選んだのもそんな5人だ。
さらに、変化するには、「自分の価値観を保持したうえで、複数の価値観を俯瞰する視点を持つことが大事」とも。そのためには、「聴き手が自分の考えや価値観をいったん脇において、判断をはさまずに相手の話に関心を寄せる」=「聴く力」を持てるかどうかがカギだという。
「変えるべきは、日本に根付く身分制度です」
そう説明するのは、地方創生に長年取り組む日本総研の藻谷浩介さん(57)だ。各地を訪れて目の前にあるものを見つめるなかで、ある問題に気づいた。
人材は豊富なのに、都会と田舎、正社員と非正規社員、年齢などの“身分”が社会を縛っている。まるで幕末のようだと感じた。それを打破するためには、「色眼鏡なく、事実をありのままに見て認識する能力と習慣をつけること」だと指摘する。
フェムテックのベンチャー「フェルマータ」を19年に起業した杉本亜美奈さんは「自分が納得できているか」を重視する。海外生活が長く、常に自分の価値観が試される日々。幼い頃から、「こうあるべき」に従う習慣はなかった。
「他人の常識は自分の常識ではないという状況が当たり前。自分の納得感を大事にしていると、周りにも自分を貫く人が集まってくるように感じています」
大切なのは、「自分の頭」で考えること。シンプルに思えるが、実践するのは意外と難しい。
「指示されるまま行動するのではなく、自分の中で物事を組み立ててアウトプットする。それが何かを変える力になると思います」