
■5海域で領海幅を縮小
どのように主権を放棄しているかというと、日本は日本領土沿岸から12海里までの海域を日本領海と規定しているにもかかわらず、それら五つの海域では領海幅を3海里に縮小して、海峡中央部を公海、すなわち日本の主権が及ばない海域と宣言している。
国連海洋法条約では、国際交易や国際交通にとって必要不可欠な海峡とその上空については、沿岸国の主権を制限し、どんな国の艦船や航空機も通過可能にする「国際海峡」の制度が採択されている。しかし、日本の「特定海域」は日本自らが主権を完全に放棄して、海峡中央部に公海を設定している点で「国際海峡」とは異なっている。
■頼みの綱の米軍に激震
問題なのは、このような主権放棄を法定した理由である。この法律が制定された当時、米軍は日本海に核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を潜航させ、当時のソ連を先制攻撃する作戦を保持していた。ところが、日本の海峡に公海部分が存在しなければ、核ミサイルを搭載した米軍艦が通過する場合、日本の「非核三原則」に抵触してしまう。そのため、日本政府は自ら海峡部での国家主権を放棄することで、米軍艦が日本側に何の気兼ねもなく通過できる抜け道を設定したのだった。
日本が国防を米国に頼り切っている限り、米軍艦が自由に日本の海峡を通航するための「特定海域」を維持し、自らの国家主権を放棄する状態が続くことになる。
しかし、その頼みの綱である米軍に、激震が走っている。
米軍トップの統合参謀本部議長ミリー大将は10月27日、米ブルームバーグのテレビのインタビューで、中国軍の新型の極超音速兵器のテストが進展している状況について「スプートニク・ショックの再来のような事態だ」と明言した。
中国軍が間もなく完成させると考えられているこの兵器は「部分軌道爆撃システム」と「極超音速滑空体」を組み合わせた新型ミサイルで、弾道ミサイルと長距離巡航ミサイルの利点を併せ持った強力な兵器だ。
超高速で飛翔(ひしょう)する弾道ミサイルを撃墜するのは極めて困難だが、弾道ミサイルは放物線状を描いて飛翔するため、迎撃側には弾道の予測計算が容易だ。だから弾道ミサイル迎撃システムが開発されているのである。