米上院の公聴会で証言する米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長/9月28日、ワシントン
米上院の公聴会で証言する米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長/9月28日、ワシントン

 日米同盟を基軸とした日本の防衛が揺さぶられている。中国とロシアの合同艦隊が津軽海峡を通過。米軍制服組トップは中国の最新兵器に強い危機感を示している。AERA 2021年11月22日号から。

【写真】パレードに登場した極超音速滑空ミサイル「DF(東風)17」はこちら

*  *  *

 日本政府が日本の防衛について語る際、念仏や題目のように「日米同盟の強化」を口にする。しかし、日本自身の防衛を米国に頼り切っている現状について、真剣に再考を迫る具体的な動きが持ち上がっている。強力な中国・ロシア合同艦隊の津軽海峡通航と、米軍トップによる中国軍の極超音速(ハイパーソニック)兵器に関する畏怖(いふ)の念の表明である。

■日本が自ら主権を制限

 防衛省などによると、駆逐艦2隻、フリゲート2隻、補給艦と潜水艦救難艦それぞれ1隻の計6隻で編成された中国艦隊が10月11日、対馬海峡を通過。東シナ海から日本海に入りロシア海軍との合同訓練に参加した。その後、潜水艦救難艦を除く5隻の中国艦隊が、駆逐艦2隻、フリゲート2隻、それにミサイル観測支援艦1隻で編成されたロシア艦隊と中ロ合同艦隊を編成し、日本海から津軽海峡を通航して西太平洋に進出した。

 さらに10隻の中ロ軍艦は同月22日、大隅海峡を通航して東シナ海に入った。その後、中国艦隊は東シナ海を渡って中国に帰投し、ロシア艦隊は対馬海峡を通過して日本海をウラジオストクに向かった。

 中ロ艦隊によるこのような動きは、ますます強力化していく中国海軍戦力と復活しつつあるロシア海軍戦力による日本への示威活動という側面だけで捉えてはならない。日本で問題にされるべき論点は、日本の国防姿勢である。

 中ロ合同艦隊が津軽海峡、そして大隅海峡を堂々と通航したのは、それらの海峡が1977年に公布された日本の法律である「領海及び接続水域に関する法律」で、「特定海域」に指定されているためである。

「特定海域」という日本独自の制度は、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡(東水道ならびに西水道)、大隅海峡における日本の国家主権を自発的に制限して、民間船はもとより、いかなる国の軍艦でも、日本に何の遠慮も警戒もせずに、それらの海峡を大手を振って通航することを可能にしている。これは国際軍事常識からすると、いたって奇妙な制度なのである。

次のページ