筒香嘉智について「始動するタイミングが早くなり、下半身のパワーがバットに伝わる打ち方をしている」と米国駐在の記者は話す(gettyimages)
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 大リーグで不振にあえいでいた筒香嘉智が、今季3球団目のパイレーツで活躍している。マイナーリーグで試合を重ね、苦手の速球に対応できるようになったという。AERA 2021年10月4日号では、本領を発揮した筒香選手について関係者に取材した。

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 この復活劇を予想した人は多くないだろう。大リーグでレイズ、ドジャースを自由契約となり、パイレーツに移籍した筒香嘉智(つつごうよしとも・29)が本塁打を量産している。

 9月20日のレッズ戦で「2番・右翼」でスタメン出場すると、初回に94・3マイル(約151・8キロ)の直球を弾丸ライナーで右翼席へ8号先制アーチ。三回の第2打席では中前適時打を放った。パイレーツ専門メディアの「Rum Bunter」は「ヨシ・ツツゴウを誰も止めることはできない」と絶賛した。

■大リーグで上位の成績

 移籍後は打率3割1分4厘、8本塁打、22打点で、本塁打数は大リーグ移籍1年目の昨季と並んだ。出塁率と長打率を足し合わせた数値のOPSは1・098。8月16日以降の試合で100打席以上に立った打者のうち、大リーグ全体で5位にランクインするという。

 筒香はDeNAで2016年に44本塁打、110打点で2冠に輝くなど通算205本塁打をマーク。侍ジャパンでも4番を務めた。19年オフにレイズへポスティングシステムで移籍。だが、昨季は打率1割9分7厘、8本塁打、24打点に終わった。2年契約最終年の今季も打率1割6分7厘、0本塁打、5打点と結果を残せなかった。5月11日に出場の前提となる40人枠から外れ、移籍したドジャースでも打率1割2分、0本塁打、2打点。6月9日に負傷者リスト入りし、8月14日に自由契約が発表された。

 筒香が大リーグに挑戦する際に、懸念されていたのが150キロを超える直球への対応力だった。大リーグには160キロ近い直球を投げる投手がゴロゴロいる。レイズ、ドジャースでの打撃不振はその不安が的中する形となった。2度の戦力外通告という非情な現実を突き付けられて「日本球界復帰」も囁(ささや)かれたが、筒香の気持ちは折れていなかった。

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